除草剤・アトラジンがオスガエルを「機能的には完全なメス」に変えた 米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

10.3.2

  トウモロコシなどの栽培に広く使われ、日本の水域でも検出される除草剤・アトラジンはカエルの性を完全に変えてしまう可能性がある。これは、カリフォルニア大学バークレー校のTyrone Hayes教授率いる新たな研究による驚くべき発見である。

 全米科学アカデミープロシーディング誌オンライン版として3月1日に発表されたこの研究によると、アトラジンに暴露されたオスの染色体をもつアフリカツメガエルの一部が、遺伝子以外はメスと変わらず、オスとつがい、孵化する卵まで産むことができるほどにほぼ完全にメスに変わってしまったということだ。アトラジンには以前かtら環境ホルモンの疑い(多くは女性化を促す)がかけられてきたが、これほど劇的な効果が報告されたのははじめてだ。 

 40匹のオスのアフリカツメガエルを対象とするこの研究は、これらがまだオタマジャクシのときに、アトラジン汚染レベルが2.5ppb(米国環境保護庁の飲料水基準内)の水に入れた。この水の中で成長したカエルのおよそ10%が「機能的にメス」 になった。交尾後に産んだ卵は孵化し、子はすべてオスだった。両親ともにオスの遺伝子を与えたからだ。残り90%は多少なりともオスの特徴をもっていたが、テストステロン(男性ホルモンの一種)が少なかった。メスの注意を引くことでも、アトラジン処理をされなかったオスに負けた。

 研究者は、カエルの皮膚からアトラジンが吸収され、オスではあかないはずの遺伝子のふたをあけた。これがテストステロンをエストロゲンに転換させる酵素を生み出し、カエルの体に間違った化学的信号をあふれさせた可能性があるという。

 こんな劇的な影響が、いままで何故発見されなかったのか、疑問は残るが、アトラジンへの疑惑は深まるばかりだ。

 Tyrone B. Hayes et al.,Atrazine induces complete feminization and chemical castration in male African clawed frogs (Xenopus laevis),PNAS,Early Edition,March 1, 2010
 abstract:http://www.pnas.org/content/early/2010/02/12/0909519107.abstract?sid=409d7474-79ea-4b04-8d6b-adfc6d468bac

 なお、EUではアトラジンは禁止された。安全としてきた米国環境保護庁(EPA)も再評価をはじめている。日本は?