米国 殺虫剤・エンドスルファン使用の全面停止へ 労働者と野生動物に容認できない神経・生殖リスク

農業情報研究所(WAPIC)

10.6.11

 米国環境保護庁(EPA)が6月9日、殺虫剤・エンドスルファン(またはベンゾエピン)の米国におけるあらゆる使用を終わらせる措置を取ると発表した。エンドスルファン(日本における商品名はチオダン、マリックス、マリックスベイトなど)は野菜、果実、ワタで使われているが、農場労働者と野生動物を神経及び生殖に関する受け入れがたいリスクにさらし、環境中に長く残留する恐れもあるという。

 EPAの発表によると、新たなデータは労働者が直面するリスクはこれまでに知られていた以上に大きいことを示した。また、EPAは、水生・陸生野生動物や、エンドスルファンを取り込んだ水生餌動物を食べる鳥や哺乳類に対するEPAの基準を超えるリスクがあることも発見した。農場労働者は、吸入と肌での接触を通じてエンドスルファンにさらされる可能性がある。

 なお、エンドスルファンは米国の食料供給においてはほんのわずかな部分で使われているだけで、食事による暴露からの健康リスクはないという。

 EPA to Terminate All Uses of Endosulfan to Protect Health of Farmworkers and Wildlife,EPA News Release,6.9
 http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/d0cf6618525a9efb85257359003fb69d/44c035d59d5e6d8f8525773c0072f26b!OpenDocument

 先日、ブラジル農業ではサイヘキサチン、アセフェート、メタミドフォス、エンドスルファンが野放しで使われていると報じられたが(強毒殺虫剤に依存するブラジル農業 ブラジル衛生監督庁が暴露,10.6.3)、ブラジルでは2007年、これらの殺虫剤による、特に農業労働者の中毒事件は6240件にのぼった。これら殺虫剤は肝炎、皮膚病、癌、ホルモンに関する問題、神経に関する問題の原因になっているという。

  なお、EPAの決定を受け、インドとブラジルと並ぶエンドスルファン使用国のオーストラリアも見直しを始めるという。

 Insecticide use under review after US joins ban,smh,6.11
 http://www.smh.com.au/environment/conservation/insecticide-use-under-review-after-us-joins-ban-20100610-y0mp.html