農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域)>20191118

ネオニコチノイドで宍道湖のうなぎが激減 全国のうなぎ党 ネオニコ禁止に立ち上がれ!

ウナギは日本の食文化を代表する貴重な食材です。海外に比べウナギの消費量が高い日本ゆえに、資源保護に向けた動きを加速させなければいけません。うな丼や鰻の蒲焼、日本人が愛してやまないご馳走であり、大切に守るべき食文化です。この大切な日本の食文化を絶やさないためにも、ニホンウナギを絶滅させるわけにはいきません」(浜名湖発「ニホンウナギ資源回復プロジェクト」2019

このプロジェクト、ウナギ資源回復のために、「浜名湖で10年ほど育った親うなぎを市場で買い上げて産卵場所であるマリアナ諸島沖へ向けて帰しています。そして、孵化しシラスウナギとなって日本近海に遡上する稚魚の回復を願っています」という。

 しかし、浜名湖で育った親うなぎの減少が気になる。図に見られるように、浜名湖でのうなぎ漁獲量は今世紀に入ってからだけでもほぼ半減している。この趨勢が続けば、早晩、放流する親うなぎ自体がいなくなってしまうだろう。うなぎ資源はどうしてこんなに減ったのか、親うなぎ放流だけではなく、考えられる要因を一つずつ潰していかなければ資源回復は実現しないだろう。

浜名湖のうなぎが減っている要因を特定できるわけではないが、一般論として農薬、ネオニコチノイド殺虫剤を有力要因の一つに上げることができる。うなぎ資源保護のためには(それで万事解決するわけではなかろうが)、先ずはネオニコチノイドの使用を禁止せねばならない。最新の科学的知見がこれを支持している。

 最新の科学的知見とは次のようものだ。

ウナギとワカサギの激減、殺虫剤が原因か、宍道湖 ネオニコチノイドの水界生態系への影響を初めて検証、産総研ほか ナショナル・ジェオグラフィック 19.11.16

19935月、島根県の宍道湖付近の稲作農家がイミダクロプリドという殺虫剤を使いはじめた。

 同じ年、甲殻類や動物プランクトンなど、食物網の土台となる節足動物が減りはじめた。1994年の終わりには、これらを餌とするニホンウナギ(Anguilla japonica)とワカサギ(Hypomesus nipponensis)が激減した。そして、イミダクロプリドをはじめとするネオニコチノイド系殺虫剤の使用は年々増え続け、以後、魚の数は回復していない。

 111日付けの科学誌「サイエンス」に発表されたこの論文により、世界で最も広く利用されている殺虫剤であるネオニコチノイド系殺虫剤が、水界生態系に漏れ出し、漁獲量を激減させ、漁業に大きな打撃を与えていたことが明らかになった。科学者たちは、これは日本だけの現象ではなく、ネオニコチノイドが世界の水界生態系に及ぼす深刻な被害の劇的な1例にすぎないと見ている。

 宍道湖では、ネオニコチノイドの使用が始まる10年以上前の1980年代初頭から、漁場の調査が継続的に行われていた。このようなデータは非常に珍しい。宍道湖の研究者たちは、水質、節足動物と動物プランクトンの数、魚の漁獲量などを幅広く記録していた。(参考記事:「ウナギ保護の具体的な課題とは」

 論文の筆頭著者で、産業技術総合研究所と東京大学に所属する山室真澄氏らは、この記録を使って、ネオニコチノイドの使用と食物網の混乱との間に明確なつながりを発見した。

 ネオニコチノイドを使い始めた1993年の前後12年間について、魚の餌になる微小な甲殻類などの動物プランクトンの量を集計したところ、平均で83%も減少していた。

 なかでも、オオユスリカ(Chironomus plumosus)の幼虫は、2016年には全然見つからなかった。山室氏はこのことにショックを受けたという。

「本当に驚きました」と山室氏は言う。「私が大学生だった1982年には本当にたくさんいたのです」

ネオニコチノイドの使用削減・禁止に向かう世界の潮流に逆行、日本ではネオニコチノイド使用が促進されている。全国のうなぎ党、日本の食文化を守るために、ネオニコチノイド禁止に立ち上るべきだろう。

他の参照記事

Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields Science01 Nov 2019 : 620-623 Full Access

Fishery in Lake Shinji, Japan, collapsed 1 year after neonicotinoid use,EurekAlart! AAAS,19.10.31