農業情報研究所
ニュース ＆ ハイライト
異常気象と温暖化
農業情報研究所（WAPIC）
00.11.1
今年は、かつてない旱魃や豪雨・強風が世界各地で頻発するという近年の傾向が一段と強まった。バングラデシュ、インド、モザンビーク、ブラジルが大洪水に襲われたかと思うと、東アフリカや中国東北部が厳しい旱魃に見舞われた。その後、インドシナがメコンの氾濫にさいなまれ、１０月半ばになると、イングランドとアルプス（イタリア）が前代未聞の雨に襲われ、甚大な被害を受ける。追い討ちをかけるように、１０月末から１１月にかけて、イングランドは最悪の強風と洪水に襲われ、フランス沿岸では有毒化学物質を積んだイタリアのタンカー「イエボリ・サン」が沈没した（フランスは、昨年１２月にも、フランスの森林の年伐採量の３年分に相当する樹木をなぎ倒した強風によって沈没した石油タンカー「エリカ」によって巨大な海洋汚染被害を受けている）。このような激烈な天候が既に始まっている地球温暖化の影響ではないかという論調が高まっている。
１０月１日、ＡＦＰは「地球温暖化は既に異常気象の引き金となっているという説もある」と報じた。それによれば、こうした現象を温暖化に結びつけることには慎重な意見が多かったけれども、最近ではそれを肯定する研究者も現れてきた。９月２９日、ＷＷＦに委託された研究を発表したアムステルダム自由大学環境研究所の二人の研究者（Pier Vellinga,Willem van）もそうである。二人は、異常気象による被害の少なくとも一部は人間が引き起こした気候変動に原因があると認め、「赤道から南の地方の方が、多分、一層頻繁になるエル・ニーニョと、短期化し・強まるラ・ニーナを含む異常気象の被害を多く受ける」と予想する。また、米国海洋大気局（ＮＡＯＯ）のチームが先月『サイエンス』誌に発表した研究は、今後１世紀の間に起こり得る出来事の確率を計算しているが、地球全体で熱波が一層増し、寒波が減る確率、中緯度地方で夏の旱魃と冬の降水が増す確率を９０−９９％、熱帯の嵐が一層頻繁になり、また破壊的になる確率を６７−９０％としている。
１０月半ばの欧州の大雨は、とりわけ欧州マスコミをこの問題に敏感にさせ、来月に予定されているハーグでの気候変動枠組み条約締約国会議（COP６）に向けての真剣な取り組みを求める論調が高まった。
１０月１６日、英国『ガーディアン』は「雨よ降れ、気候変動と環境に無関心な英国には短期だが鋭いショックが必要」の記事を掲げた。
１８日には、仏『ル・モンド』が「２０００年の地球、かつてない暑さと雨」で、科学者はこれを気候変動のサインと断定するのを躊躇ってきたが、９月２２日の『サイエンス』誌の記事（NOAAチームによる）によりその可能性が示唆されたと指摘する。しかし、同紙は温暖化にどう取り組むかは政治の問題であり、気候変動に対する態度は、米国大統領選挙の候補者であるゴアとブッシュをはっきりと分かつ争点の一つであると言う。
しかし、月末から始まったイングランドの荒天はイギリス政府の態度に大きな影響を与えた。１０月３１日、『ガーディアン』は「地球温暖化、それは今ここにある、６人の死者、ストームで国中が大混乱」と書き、同時に、環境大臣・ミーチャ−に次のように書かせている。
「極端な天候の条件が毎度起こると主張するのはばかげている。それは地球温暖化のせいだ。しかし、極端な天候の頻度が増し、強度が増すことは、地球温暖化が唯一の原因ではないとしても、主要な要因であることを示唆している。・・・。気候変動は遠い将来のトレンディな知的シナリオではない。それは、今、ここにある」。代替燃料の使用の加速を要請しながら、彼は「世界中で数百万の人々が旱魃、洪水、病気に直面している。ここ英国でも脅威に直面している。エキゾチックな病気の共通化、ある何年かは旱魃、他の何年かは洪水、海に飲み込まれる低地地域の予測。しかし、今こそ差し迫った危機への挑戦をスタートさせる好機である」。
関係記事
●Global warming already triggering extreme weather,say some,AFP/Yahoo!,.10.1
●Let it rain:Apathetic about climate change and out of touch environment,Britain needs a short sharp shock,,The Guardian,10.16
●L’an 2000 a soufflé le chaud et l’humide comme jamais sur la planète,,Le Monde Interactif,,10.18
●Global warming:it’s with us now-Six dead as storms
bring chaos throughout the country,,The Guardian,10.31