地球温暖化の終末が来る前に化石燃料が枯渇―スウェーデン研究者

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.3

 スウェーデン・ウプサラ大学の「炭化水素枯渇」研究グループ(Uppsala Hydrocarbon Depletion Study Group, UHDSG)が地球温暖化のシナリオが具体化する前に石油とガスが使い果たされてしまうだろうというショッキングな分析を発表した。New Scientist(プリント版)の10月2日号に掲載されたという。これについて、10月1日付のNewScientist.com('Too little' oil for global warming )が次のように伝えている。

 著者たちは、大気中の二酸化炭素が氷冠溶解と酷暑の予想が実現するのに十分になる前に、あらゆる燃料が燃やされてしまうだろうと警告している。気候変動政府間パネル(IPCC)の科学者は、彼らは石油・ガスの埋蔵量の様々な推計を考慮したと言い、石炭を燃やせば不足は容易に補えると指摘して自らの予測を擁護しているが、石炭燃焼が地球にもっと大きな災いになることにはすべての者が同意しているという。

 IPCCは化石燃料の放漫な燃焼から、よりグリーンなエネルギーへの早期の移行まで、様々なシナリオを考慮しているが、ウプサラ大学の地質学者であるAnders Sivertsson、Kjell Aleklett、Colin Campbell は、IPCCの40のシナリオの最も控え目なものものでも、それが実現するのに十分な石油とガスが残されていないと言う。

 石油とガスの埋蔵量の各種の推計には大きな開きがあるが、彼らは石油供給は2010年にはピークに達し、ガス供給のピークもそのすぐ後に来ると考える。彼らは次第に増加しつつあるこのような専門家のグループを構成している。彼らの分析では、石油・ガスの残存埋蔵量は3兆5千億バーレルで、IPCCの最も楽観的なモデルで燃やされると推計された5億バーレルよりも相当に少ない。IPCCの最悪のケースでは、彼らが残っていると信じる量の5倍の18億バーレルの石油・ガスが燃やされると見込まれる。Aleklettは、これは非現実的と言う。IPCCの平均的推定の8億バーレルでも、彼らの推定する残存量の2倍以上になる。

 IPCCの予測チームを率いたウィーン大学のエネルギー経済学者・Nobojsa Nakicenovicは、IPCCの推計は、スウェーデン研究者の控え目な推計よりもはるかに広範な、国際的に受け入れられた推計に基づいており、パネルの仕事はなお揺るがないし、掘り出すことのできる巨大な量の石炭が地下にあると言う。しかし、Aleklettは、石炭を燃やせばIPCCのシナリオが本当のものになるだろうとは認めるが、そのような燃料転換は破滅的と指摘する。石炭は、エネルギー単位当たりで石油・ガスよりも多量の二酸化炭素を出すとともに、大量の微粒子も出す。それは一層汚い燃料だ。彼は、最新の分析は政策メーカーへの警告だと言う。

 このような違いはどこから来るのだろうか。インディペンデント紙(Oil and gas running out much faster than expected, says study,10.2)によると、世界資源研究所の気候変動プログラムのジェームズ・マッケンジー博士は、経済学者と地質学者の間で分裂があると言う。現在、年々の石油消費は250億バレルになり、これが衰える気配はない。従って、20年以内に「生産危機」が来るだろう。このとき、経済学者は、それが石油価格引き上げを強要し、「90%が岩で、10%が石油であるタール質の砂地や鉱床のような、あらゆる場所」から採取することが経済的になると考える。地質学者は「あなた方は我々に鉱床がどこにあるのか、我々がそれを見つけると言うが、我々は探してきた、もう探せない」と言う。

 いずれにせよ、2010年からそう遠くない時期に石油その他の燃料の価格は急騰、化石燃料に代わる更新可能なエネルギーに移行しない限り、破滅的な経済的結果が生まれる可能性があることになる。2050年頃までには何とかといったスローペースの対策では間に合わなくなるかもしれない。