日本各地、4人が熱中症で死亡、上陸果たし温暖化というテロリスト

農業情報研究所

04.7.9

 マスコミ各紙が報じていることだからここに書くまでもないことなのだが、日本にも遂に大量殺戮兵器が上陸したことを示す記念的出来事として記録しておきたい。全国各地で35℃を超える暑さとなった昨日の午後、熱中症で4人の方々が亡くなったという。

 茨城県牛久市牛久町では、7日から行方不明になっていた75歳の女性が倒れているのが発見され、病院に運ばれたが死亡した。三重県伊勢市東豊浜町では、ビニール・ハウスで作業中の79歳の女性が亡くなった。群馬県榛名町十文字の畑でも、農作業中の73歳の女性が倒れ、死亡しているのを夫が発見したという。埼玉県川越市の民家の外壁工事をしていた狭山市の28歳の大工さんが体調不良を訴え、病院に運ばれたが、死亡した。牛久の女性についての事情は分からないが、屋外でしかできない普段の仕事の最中であっただけに、余計に痛ましい。

 昨年7月の英国「ガーディアン」紙の記事を思い出した(Global warming is now a weapon of mass destruction,The Guardian,03.7.28)。これは、国連気候変動政府間パネルの共同議長も努めた気象問題の世界的権威者の一人であるSir John Houghton が書いたものだ。.彼は次のように言う。

 「もし政治指導者に何にもまさる責務があるとすれば、それはその国民の安全を護ることだ。首相によれば、これは、イギリス人の安全を・サダム・フセインの大量殺戮兵器から護ることだ。だが、我々の長期的安全保障は、真の国際テロリズム=人間がもたらす気候変動によっても、少なくとも同じほどに脅かされている。

 最初は気象局局長、次いで国連気候変動政府間パネルの科学的評価共同議長として数十年働いてきた気候学者として、地球温暖化の影響は、私が「大量殺戮兵器」と呼ぶに何のためらいも持たないようなものだ。

 この兵器は、テロリズムのように国境を知らない。それは、どこでも、ある場所では熱波、別のところでは干ばつ、洪水、嵐などのどんな形でも、襲うことができる。これは将来の問題でもない。90年代は、多分、この1000年で最も暑い10年だったし、98年は最も暑い年だった。地球温暖化は、今、我々の上にある。

 世界気象機関は今月、極端な天候事象は、既に結果として一層頻繁になりつつあるように見えると警告した。米国本土は、5月に562のトルネードに襲われ、41人が死んだ。途上国世界は最も激しい襲撃を受ける。極端な気候状態は低緯度地方で一層激しく、貧しい国々は災害に対処する能力が低い。インドの今年のモンスーン前の気温は、平年よりも5℃高く、49℃に達した。

 この殺人的熱波が引き始めたとき、1500人が死んでいた。この数は、9月11日の世界貿易センター攻撃での死者の半分だ。科学的確実性をもって単一の天候事象を気候変動のせいにすることは誰もできないが、より高い最高気温は加速される地球温暖化の最も予測可能な影響の一つであり、地球温暖化とグローバル・テロリズムが並行していることは、ますます明白になっている」。

 昨年欧州を襲った熱波は3万5000人の命を奪った。9.11の犠牲者の比ではない。今年7月始め、中国・広州の熱波で39人の命が奪われ、100人が昏睡状態で病院にかつぎ込まれた。日本の状態は未だそれほどでもない。だが、このテロリストは、確実に上陸を果たしたようだ。

 だが、グローバル・テロリズム撲滅に最も熱心な政治指導者(ブッシュ米国大統領、ブレア英国首相、小泉日本首相、ハワード豪州首相)が、地球温暖化」という大量殺戮兵器の撲滅に最も不熱心であることも、ますます明白になっている。