ハリケーン・チャーリー、フロリダ柑橘産業に絶望的打撃

農業情報研究所(WAPIC)

04.8.17

 先週金曜日(13日)から土曜日早朝にかけて、フロリダが強烈なハリケーン・チャーリーに襲われた。このハリケーンは、南フロリダに250億ドル(約2兆7500億円)の損害と26人の死をもたらした92年のアンドリューに匹敵する米国史上最強のハリケーンの一つに数えられるという。今までのところ13人の死が確認され、損害は少なくとも200億ドルに達するだろうという。この額は、02年農業法により支払われる米国農産商品の年間補助金総額を上回る規模だ。損害の全容が判明するのは数日から数週間後というから、損害はさらに増えるだろう。

 最も被害が大きかった地域の一つが農業地帯という。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、年間80億ドルを稼ぐ柑橘産業が大打撃を受けた(Hurricane sweeps through Frorida's ctrus farms,Financial Times,8.16,p.2)。果実、果樹、インフラストラクチャーの損害は、正確には数日後にならないと分からないが、最大の柑橘産地である三つの郡―デソト、ハーディー、ポーク―が時速145マイル(秒速67m)の風速を記録したハリケーンの直接の通り道になった。この通り道には、州の柑橘生産の35%が集中する地域が含まれるという。

 アルカディアの町のジュース工場は、大量の加工ジュースの貯蔵タンクを含め、破壊された。未確認情報では、この工場だけでも損害は6000万ドル(約66億円)になる。デソトでは、果樹が未熟の落果の山に取り囲まれている。多くの樹が根扱ぎにされるか、損傷を受けた。生産者は「茫然とする」ばかり、「損害については話したくもない」ほど絶望的な状態にあるという。州当局者によれば、農業部門の損害の完全な評価には30日から60日かかる。

 このような大混乱の最中、プエルト・リコ近くのカリブ海で新たなハリケーンが発生した。それもチャーリーと同様の進路を辿ると予想されている。オレンジ・ジュースの世界的過剰をもたらしていると批判を浴びてきたフロリダ柑橘産業も、最大の試練のときを迎えたようだ。東アジアを襲う台風も年々強大化が進んでいるようだが、ハリケーンも同様だ。地球温暖化の進行とともにこのような極端な気象現象の頻度がますます増えるということについては科学界のコンセンサスがある。フロリダ柑橘産業も、その存続そのものが危うくなるかもしれない。ハリケーンの進路は予測できても、広大な柑橘園が対処する方法はない。ブッシュ大統領はヘリコプターで罹災地を視察したが、彼がなすべきことはほかにある。