温暖化がキャンティ、カリフォルニアワインを脅かす 世界のワイン地図に大変動か

農業情報研究所(WAPIC)

04.8.24

 地球の気温上昇がヨーロッパ第一級のワイン生産地であるイタリア・トスカーナのキャンティ地方を脅かしており、数十年以内に取り返しのつかない事態の変化が生じる可能性がある。AFPによると、イタリアの日刊紙である”La Repubblica”が米国の3人の研究者によるこのように警告を報じたという(Climate change affecting Italy's Chianti wine,AFP,8.23)。

 この警告は、フローレンスで開催された第23回世界地質学会議で発せられた。この会議で、南オレゴン大学のグレゴリー・ジョーンズは、「我々は、既に夏が非常に暑くなっているキャンティ地方の気温は50年以内に2℃上昇すると推定する」、「現在我々がキャンティと呼んでいるものを生産する理想的気候条件はドイツになるだろう。またシャンパンやボルドーワインを生産する理想的条件はイングランド南部になる」と述べた。

 トスカーナの気候は、大洪水による中断はあるが、次第に暑くなり、乾燥する。これはトスカーナで作られるキャンティ・クラシコのアルコール含有量・色・香りを変えるだけでなく、ブドウ園を寄生生物にも弱くするという。 

 16日には米国のスタンフォード大学等の研究者がカリフォルニアの今世紀末までの気候変動とその影響に関する研究を発表(全米科学アカデミー:”Proceedings of the National Academy of Sciences”)、温暖化ガス排出が現在のペースで続くと、内陸都市の夏の最高気温は15℃上昇し、シエラ・ネバダの雪塊氷原が73%から90%減少してサンフランシスコ湾地域からセントラル・バレーにいたる地域の水供給が断たれる、ロサンゼルスの熱暑関連死は7倍に増加し、州のワイン・酪農産業は崩壊の危機に瀕する、と警告している。世界のワイン産業地図は根本から変わってしまうのかもしれない。

 しかし、イタリアの生産者は、ここ数年の気候が変わったのは事実だが、豊作だったと言い、特に警戒しているようには見えない。02年には変化に備えて規則を変え、干ばつ時にはブドウ園の灌漑を許したという。キャンティ・クラシコ協同組合には580のブドウ栽培者とワインメーカーが登録しており、毎年3,000万本を生産、5億ユーロ(約680億円)を売り上げている。