この30年の地球温暖化は人間活動が原因 米政府が新レポート

農業情報研究所(WAPIC)

04.8.28

 水曜日(25日)、北米の気温上昇の一部は二酸化炭素などの温室効果ガスによるもので、地球温暖化は動植物に目に見える形で影響を与え始めたという米国ブッシュ政府の新たなレポートが出た。”変化する我々の地球”(OUR CHANGING PLANET)と題するこのレポートは、13の政府機関による最近の気候変動の研究を要約する年次報告の一部をなす。これは、エネルギー・商業関係諸長官と大統領科学顧問が調印した書簡とともに議会に送られた。

 このレポートは、工業化以前の気温を0.2℃上回ると推定される20世紀前半の地球温暖化は、太陽活動の活発化を含む「自然の気候変動に起因するらしい」と報告する。しかし、20世紀後半の、最近30年間に最も顕著なおよそ0.5℃の上昇は、二酸化炭素やその他の温室効果ガスなどの人間活動に関連した要因が考慮される場合にのみ説明できると言う。この研究は、最近数年で能力を増したスーパーコンピュータの気候シミュレーションに依拠するもので、国立大気研究所が行った最近の分析は、太陽とその他の要因の自然の変動は、1900年から1950年までの温暖化の原因だったが、70年以来の鋭く、継続する気温上昇は説明できないことを発見したという。

 それは、1,700の種の研究に基づき、「証拠の収支」は地球温暖化の影響が動植物において明らかであることも示す。

 また、農業に関する部分では、畑と草地が2倍の濃度の二酸化炭素に曝され、植物の生長パターンが収量を減らす方向に動くといういくつかの研究に焦点が当てられた。このような条件の下では、コロラド北東部の短茎牧草地の窒素含有量が減り、草は消化が難しくなると言う。また、他の実験では、増加する二酸化炭素は、いままでに研究された他の植物種以上に、五つの最も重要な侵略雑草種の生長を刺激するとも指摘する。つまり、二酸化炭素は作物の生長を刺激するよりも侵略的雑草の生長を促がし、また一部放牧地の草の栄養価を減らすことで、農民に新たなリスクをもたらすというのである。

 ブッシュ政府は、人間活動が地球温暖化の原因とするほとんどの主流科学者の結論を疑い、二酸化炭素排出削減の努力に消極的な立場を貫いてきた。

 01年、全米科学アカデミーが地球温暖化に関するレポートを発表すると、ブッシュ大統領は、温室効果ガスが、大部分は人間活動のために増えてきたと言いながら、温暖化には別の要因が関係している可能性があることを強調、「我々は、自然の変動が温暖化にどの程度影響したのか分かっていない」と言い抜けた。

 02年6月、地球温暖化の原因が人間にあるとし、それが大きなリスクを生むことを示唆する政府文書が気候変動条約に従って国連に提出された。大統領はこれにも距離を置き、「官僚の作文」にすぎないと無視した(米国:気候は変わる、米国レポート)。彼は、温室効果ガス排出に新たな制限を課す前に、一層の科学的研究が必要だと一貫して主張してきたわけだ。

 今度のレポートについてはどうか。大統領の科学顧問、ジョン・H・マーバーガーは、この研究は地球温暖化に関する科学的研究の年々のサマリーに過ぎず、政策的含意はないと予防線を張っている。彼は、、「気候変動は我々の環境に広範な影響を及ぼし得る。だから、大統領は、この問題に取り組む最善の科学と技術を開発する攻撃的戦略を前進させてきた」と言う(Administration Shifts on Global Warming,The Washington Post,8.27

 また、海洋及び大気担当の商務長官補佐で、政府の気候研究指揮者のマハニー博士は、レポートは主として気候研究計画全体を見直すもので、政府の考える結論的な「科学の現状」の要約を意図したものではない、レポートで取り上げられた気候モデル、農業、その他の問題に関する研究は、「重要だが、決定的なものではない」と言う(U.S. Report Turns Focus to Greenhouse Gases,The New York Times,8.27)。

 大統領には、未だ言い訳を続ける余地があるかもしれない。だが、今回のレポートは、諸長官と大統領科学顧問が調印した書簡を伴うもので、いままでのレポートとは重みがちがう。「決定的」ではないとしても、「重要」であることは確かなのだ。02年の国連提出レポートのように、「官僚の作文」と無視することはできないだろう。先のワシントン・ポスト紙によると、全米野生動物連盟の地球温暖化プログラムを率いるジェレミー・サイモンは、「地球温暖化の科学としては何の新味もないが、政府の立場としてみれば、決定的に新しい」と言っている。

 ブッシュ政府の気候変動対応が大きな転換点を迎えることになるかもしれない。