EU閣僚理事会、フロン系温室効果ガス新措置を採択 カーエアコン代替フロンは段階的廃止へ

農業情報研究所(WAPIC)

04.10.16

 EU環境相理事会は14日、一定のフロン系温室効果ガス(FGG)の排出削減のための規則案と、自動車エアコンの冷媒として一般化している(わが国でも)代替フロン(HFC-134a)を段階的に廃止する指令案に合意した。これは、EUの京都議定書目標達成を可能にするFGG排出削減を目指すコスト節約的措置を導入するものである。

 規則案は、京都議定書の付属書Aに掲げられたFGG(ハイドロフルオロカーボン=HFCs、パーフルオロカーボン=PFCs、六弗化硫黄=SF6)の封じ込め、利用、回収、破壊にかかわる。検査と回収のための最低限の基準の設定によりこれらの封じ込めを改善する。また、排出のモニタリングと報告を強化、消費者が情報に基づく選択をできるように製品や設備の表示を導入、さらに人材の訓練と認証のためのEU規模の最低規準を設定する。封じ込めが実行不能、あるいは利用が不適なところでは、販売と利用が禁止される。マグネシウム・ダイカスティング、自動車タイヤのFGG、詰替えられないコンテナ、窓、履物(スポーシューズのエアクッションなど)、自動冷却飲料缶、新規防火システム、消火器などがその対象となる。

 もともと規則(加盟国に直接適用される)案に含まれた自動車エアコンへのHFC-134a利用の段階的廃止は、別立ての指令(各国が目標達成のための国内法を制定する)案に分離された。自動車エアコンの冷媒としてのHFC-134aの利用は、2011年からはニューモデルで禁止され、2017年からはすべての新車で禁止される。さらに、この段階的廃止がスタートする前にも、漏出は年に40グラム以下に抑える。

 委員会担当官は、これによる自動車産業のコストは、当初で年に3-4,000万ユーロ(1ユーロ=約137円)、完全実施の後には年に2-4億ユーロになると言う。このルールはもちろん、EU車だけでなく、すべての輸入車にも適用される。オゾン層破壊防止のために従来のフロンガスからHFC-134aへの切り替えをいち早く進めた日本メーカーも、欧州市場への輸出を目指すかぎり、代替冷媒の開発を急がねばならないことになる。

 FGGの排出量はEUの温室効果ガス総排出量の2%を占めるにすぎないが、その温暖化効果は高く、かつ大気中に長期にわたって残る。例えば、SF6の温暖化効果は二酸化炭素の2万3900倍にもなる。HFC-134aの温暖化効果はずっと少ないが、それでも二酸化炭素の1,300倍と言われる。欧州委員会は、措置が講じられなければ、その二酸化炭素換算排出量は、95年の6,520万トンから、2010年には9,800万トンに増えると推定している。今回合意された措置が取られれば、2012年までの年間排出量は2,000万トン削減され、規則が完全実施されたときには、4-5,000万トンが削減されるという。

 これらの法案は、今後、欧州議会と閣僚理事会の再度の審議を経て、来年末に最終採択される見通しである。指令については、加盟国はそれから18ヵ月以内に対応する国内法を整備しなければならない。ただ、閣僚理事会では、デンマークとオーストリアが反対に回った。欧州議会の環境派は、このような規則は、もっと前進しようとする加盟国の動きを制約することになるという声明を出した。このままの形ですんなりと最終採択に漕ぎつけるかどうかは分からない。

 資料
 (EU閣僚理事会)2610th ENVIRONMENT Council meeting (provisional version) - Luxembourg, 14 October 200410.14
 (欧州委員会)Climate change: Commission welcomes political agreement in the Council to reduce emissions of fluorinated greenhouse gases10.14
 EU Wants to Cut Greenhouse Gases in Cars, Shoes,Reuters,10.14