地球温暖化の食料作物生産への影響 以前の予想よりはるかに深刻ー英国科学アカデミー国際会合

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.27

 地球温暖化の世界作物生産へのマイナス影響は以前に予想されていた以上に大きい。これは、「気候変動のなかの食料生産」と題して26日に開かれた英国ロイヤル・ソサイエティーの会合の結論である。この会合には、気象学、気候科学、農業の分野の世界クラスの科学者が参集した(Royal Society news:Impact of climate change on crops worse than previously thought,4.26)。

 この会合は、世界中で栽培される基本食料作物の生産性への気候変動の影響を議論した。気温上昇や干ばつが与える作物生産への悪影響は、大気中の二酸化炭素濃度がもたらす「施肥効果」によりある程度相殺されるというのが従来の大方の見方だった。しかし、イリノイ大学のスティーブ/ロング教授は、これは温室内などでの比較的小規模な閉鎖系での実験に依拠するもので、より現実の条件に近い屋外圃場での米国、中国、日本の四つの実験の結果は、すべて、トウモロコシ、コメ、大豆、小麦における「施肥効果」は閉鎖系での実験に比べて半分にすぎないことを示していると報告した。

 ロング教授は、さらに気温上昇に伴う地表オゾンの増加も減収に導く。オゾンのレベルの20%の上昇は作物の20%の減収をもたらすという。彼は、「両方の結果は、我々が将来の世界食料生産の予想を以前に推定されていたよりもはるかに低いものとして深刻に再検討する必要がある」と言う。

 さらに、英国とデンマークの科学者は、僅か数日の高温も、もし開花期に重なれば、小麦、大豆、コメ、塊茎作物などの主要作物の収量を大きく減らすことを示した。これらの結果は、それ以上になれば作物が気候変動に非常に弱くなる限界値があることを示唆するという。

 会合の結果は、とりわけアフリカの食糧安全保障に言及するであろう7月のG8サミットで議論されることになる。今年は中国、タイを始めとする東南アジア、ブラジル南部などの中南米諸国、アフリカ諸国がとりわけ厳しい干ばつに喘いでいる。