FAO報告、気候変動の途上国食糧保障と動物病・植物病虫害の世界的増勢に警告

農業情報研究所(WAPIC)

05.5.28

 国連食糧農業機関(FAO)が27日、食糧安全保障委員会(第31回、ローマ、5月23−26日)に提出した報告書で、気候変動(地球温暖化)が途上国で利用できる農地の減少により世界の飢餓人口を増加させる恐れがあると述べたことを発表した(Climate change could increase the number of hungry people)。報告書は、4億5000万の栄養不良人口を含む20億の人口を持つ約40の途上国で、気候変動による生産減少が栄養不良人口を劇的に増加させ、貧困と食糧安全保障との闘いを厳しく妨げると言う。

 最も厳しい影響を受けそうなのは、気候変動に適応できず、食糧輸入を通じて不足を補わねばならないサブサハラ・アフリカ諸国である。これと対照的に、先進国は気候変動の結果として、平均的には生産能力を増やしそうだという。

 途上国では、気候変動は乾燥し、水不足の土地を増加させる恐れがある。アフリカでは、120日以下の植物生長期間の土地が11億fある。2080年までに、気候変動はこの面積を5%から8%、5000fから9000fほど増やす可能性がある。

 1995年の世界総人口の半分が住む65の途上国は、気候変動の結果として、2億8000万トンの穀物生産能力を失う。この損失は560億ドル、1995年のこれら諸国の国内農業総生産の16%に相当する。

 アジアの場合には、気候変動の影響は様々で、インドは雨水に頼る穀物生産の1億2500万トン、18%を失うが、中国のそれは3億6000万トン、15%増えると予想される。 

 気候変動は食糧安全保障に影響を及ぼすだけでなく、動物病と植物病虫害の発達と激化にも影響しそうである。その大部分は局地的なものだが、特に現代の貿易パターンと人の流動性のために、世界的な意味を持つ。グローバル化する世界では、農業は、気候変動から生じる変化する生態条件により引き起こされ、増加する国際貿易と移動性により大きく増幅される新たな病虫害と病気の加速する流れに適応せねばならない。

 報告書は、気温の変動は、大気汚染の悪化とともに、人間にも危険性のある病源体による動物病の国境を超えた拡散をもたらすから―最近の鳥インフルエンザが好例―、人間の病気のパターンも変える可能性があると警告している。