コロラドのスキーリゾート 生き残りをかけた温暖化防止策

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.18

 17日付けの“Financial Times”紙が、「君はばかげている」と言われながらも、自らのスキーリゾートの生き残りをかけて温暖化と戦う米国・コロラドの「アスペン・スキー会社」の話しを伝えている(Ski group takes no change on climate change,Financial Times,7.17,p.4)。

 この会社の最高責任者・パット・オッドネル氏は、生涯をかけたクライマーであり、アウトドアマンという。世界14番目の高峰・アンナプルナに米国人で初めて登頂を試みた。カリフォルニア・シエラネバダ山脈の250マイルのトレイルを寝袋・テント無しで踏破した。

 4年前には、アスペンのスロープにスキーシーズンが終わるまで十分な雪を残すための人工降雪機への投資を開始した。しかし、温度が一度上がるだけで、これがまったく役に立たないことが分かった。温暖化は会社の死活問題という。先のG8会合は、気候変動が「今起きている」と認め、「緊急の行動」を約束したが、これには何の拘束力もない批判する者の中には、アスペン・スキー会社も含まれる。会社の環境問題担当のオーデン・シェンドラー氏は、「拘束力がないならば、これは空虚なレトリックにすぎない」と話している。

 この会社は温暖化防止に懸命に取り組んできた。来週は、30人のパトローラーが住む2000平方フィートのパトロール本部の建物の建設に着手するが、これにスキー産業では最大級のソーラーパネルを取り付けるという。リフトを動かすための電気は風力発電所から購入しており、50台のスノーモービルの燃料もバイオジーゼル燃料を購入している。施設全体でエネルギー効率のよい改良照明を使っており、エネルギーコストは年に1万ドル節約できるという。

 シェンドラー氏は過去4年間、先月議会を通過したエネルギー法案のためにワシントンでロビー活動をしてきた。今年は、シカゴの炭素排出権取引市場にも参加した。しかし、こんな活動も、リゾート生き残りの何の助けにもならない。オッドネル氏は、まさに何の利益もないと認める。それでも、こんな努力をばかげていると揶揄する者には、我々の行動だけで世界を変えようなどとは思っていないが、優良企業のモデルになり、また最善のやり方を特にスキー産業の中で共有しようと試みているのだと答えるそうである。共和党が支配するコロラド州だから、政治的反対に出会うこともある。しかし、このままでは、リゾートは10年ともたないだろうと言う。

 毎年の雪不足(今年はぐちゃぐちゃの雪がいっぱい降ったが)に悩む日本のスキーリゾートも、「最善のやり方を共有」してみたらどうだろうか。