温暖化防止米国市長連合結成 シアトル 1990-2000年に温暖化ガス排出48%削減

農業情報研究所(WAPIC)

05.7.23

 先月、温室効果ガスの排出削減を約束する京都議定書を拒否し続ける連邦政府に業を煮やした米国全土の都市の市長が地球温暖化と闘うための連合を結成、革新的計画や技術を利用する都市の造りなおしに乗り出した。市長たちは、環境に一層優しく、同時に雇用創出と地方経済を刺激する都市生活を作り出すことができると言う。

 今や169に達した米国都市が、森林再造成、都市拡散の抑制、代替エネルギー技術の開発、市民教育などを通じ、京都議定書の目標ー温室効果ガスの排出量を2012年までに1990年レベルよりも先進国全体で6%減らすーを達成するか、それ以上の排出削減を目指すことに合意した。また、州・連邦政府に対して京都議定書の目標を追求するように、また議会に対しても国レベルの排出権取引制度を確立する“Climate Stewardship Act”を採択するように圧力をかけることにも合意した。

 インタナショナル・プレス・サービス(IPS)が伝えるところによると(ENVIRONMENT-US:Blue Skies, Green Cities,IPS,7.19)、先頭に立つグレグ・ニケ ルス・シアトル市長は、「アメリカ中の市長は、連邦政府が温室効果ガスの生産を防止するために何かをするのを待たないと明言している。地方レベル、町ごとにリーダーシップを発揮する」と言う。サンフランシスコ環境局によると、世界の人口の半分、米国人口の80%は都市地域に住んでおり、地球の天然資源の75%を都市が消費している。とすれば、このような連合が温暖化防止に果たす役割は非常に大きなものとなるだろう。

 この報道によると、7月第3週のはじめ、連合に属するソルトレーク・シティー、デンバー、シカゴの市長も含む45の市長が、気候変動イニシアティブについて議論するために、俳優・ロバート・レッドフォードのユタ・サンダンス牧場で会合を開いた。これに参加した英国気候グループの幹部は、米国の17の大都市が既に排出を90年レベル以下に減らしており、全体で6億ドルを節約したと話した。気候変動への挑戦は財政的も有利になると言う。

 この会合で、ニケルス・シアトル市長は、シアトル気候保護計画で都市生活を改善したと、“2005年都市責任賞”を受賞した。環境価値に基づく長期成長ビジョンを述べるこの計画の核心には、モノレール、軽便鉄道、路面電車、自転車道の整備などの輸送計画が含まれる。シアトルは、既に水の再利用やエネルギー効率でも国のリーダーになってきたし、130台の市有車の利用を含めた自動車相乗りや2台目の車の売却を促す奨励金も出している。シアトルにはこの6月、筆者もごく僅かな期間だが滞在した。道理で車の数が少なく、渋滞にもまず出会わなかった。滞在中に発表された米国都市における車保有台数の長期的動向を見ても、シアトルでの増加率は群を抜いて低かった。この計画には、市の車両におけるハイブリッド車、超低硫黄ジーゼル、バイオジーゼル車の増加も含まれる。

(シアトル 05年6月 筆者撮影)

その他、この計画には、都市林2500haの再建、持続可能な基準に従う市施設建設、市営電気事業の温室効果ガス純排出のゼロ化も含まれる。シアトル公共事業局は、ワシントン大学の協力を得て、気候変動情報を長期水供給計画策定に組み込むために、地球温暖化の地方的影響を測定するための近隣流域の研究も行っている。政府役人のための気候変動に関するワークショップも主催してきた。

  ニケルス市長は授賞式ののち、「これらの計画のおかげで、シアトルは一層クリーンな電力源、持続可能なビル、新たな経済機会を持っている。我々は、環境と経済の間で選択を行う必要がない模範例として他の都市に役立つことを誇りに思う」と語ったという。

 シアトルは、1990年から2000年の間に、温室効果ガス排出を48%減らした。