破局的気象災害による米国の損害が30年で15倍の報告ー保険業界に警告

農業情報研究所(WAPIC)

05.9.10

  環境問題に深い関心をもつ投資家グループ・Ceresによる保険産業と気候変動の研究(*)が、1970年以来の破局的天候ー洪水、強風、雷雨、降雹、着氷性暴風雨、野火、干ばつ、熱波、落雷、土地沈下、沿岸浸食、風媒アレルゲン(カビと花粉)ーによってもたらされる保険の対象となる損害が保険料、人口、国内総生産(GDP)の増加を上回る速度で増加していることを明らかにした。

 天候に関連しない災害の損害の増え方はもっと緩やかだ。このような趨勢は世界的にも見られる。このような損害は、過去30年で15倍にも増えた。2004年の世界全体のこのような損害は450億ドル(約5兆円)、財産損失の総額は1070億ドル(約11兆8000億円)に達した。そして、ハリケーン・カトリーナがもたらした損害はこれをはるかに超えるだろうという。

 この報告によると、カトリーナ以前でさえ、米国各地がこのような出来事に見舞われてきた。中西部農民の作物保険損害は、干ばつ、トルネード、野火、激しい降雹などのために10倍に増えた。西部の野火は、平均すると1970年代の2倍の損害をもたらしており、カリフォルニアなどの地域での野火による損害は、気温上昇と強風のために4倍にもなると見込まれる。

 報告は、このような趨勢は気候変動と関連しているとみなす。それは、このような趨勢が続けば、科学者が主に人間活動により引き起こされていると信じる気候変動の米国における影響は、不可避的に一層の保険支払い請求とコスト上昇に結果する、次には保険料の引き上げ、保険支払い上限額の引き下げ、保険がカバーする領域の制限につながるだろうと言う。

 昨年のフロリダのハリケーンは、多くの保険業者を地域から撤退させることになった。これは、米国の他の地域で今後何が起きるかを例証するという。報告は、それにもかかわらず、保険業者はこのような脅威を無視してきた、気候変動のビジネスへの影響を真面目に検討してきたのは米国保険会社のほんの一部にすぎないと警告している。

 *Availability and Affordability of Insurance Under Climate Change: A Growing Challenge for the U.S.,05.9.8
  http://www.ceres.org/pub/docs/Ceres_insure_climatechange_090805.pdf