地球温暖化でアフリカの25%に破滅的水不足ーアフリカの新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.4

  地球温暖化が引き起こす降水減少がアフリカ諸地域の河川やその他の淡水源を脅か す。降水の大部分は、河川に達するまでに土壌や植物に吸収されるから、降水減少は人間が利用できる水の量をさらに大きく減少させる。年々600mmの降水を受ける地域で降水が10%減ると、表流水は半分になる可能性もある。降水の減少と河川、湖沼などの水位低下は、今世紀末までにアフリカの4分の1の地域で水へのアクセスに重大な影響を与える。ケープタウン大学のアフリカ地球観測所ネットワーク(AEON)の二人の研究者がこのように予測するな新たな研究 を発表した。この研究は、温暖化の降水への影響を予測する多くの様々な気候モデルに基づくものという。

  Maarten de Wit and Jacek Stankiewicz,Change in Surface Water Supply Across Africa with Predicted Climate Cahnge,Science,Online March 2,DOI:10.1126/science.1119929.

 研究は、大陸を乾燥地域、湿潤地域、不安定地域の三つに分ける。乾燥地域は、今世紀末までに年400mm以下の降水しかなく、その結果河川や湖沼が事実上完全に枯れてしまう地域である。湿潤地域は、同じく年800mm以上の降水を受け取ることになるであろう地域、不安定地域は400-800mmの降水を受けることになる地域である。

 乾燥地域には、北アフリカ・サヘル全域、アフリカの角 (Horn of Africa、アフリカ北東部の半島部)の大部分、ナミビアからアンゴラ沿岸地域にまで広がる南部アフリカの西半分が含まれ、これら地域は大陸の41%を占める。降水が10%から20%増加するソマリアとその近傍のエチオピア、ケニアの一部を例外として、この地域の大部分で降水が減少、北・南西アフリカなどでは20%程度減少する。

 湿潤地域には、中部アフリカ、西アフリカの大部分、スーダン・ウガンダ・タンザニア・ モザンビークの一部とマダガスカル北部が含まれる。これら地域の大部分で、降水は最大で10%増加する。

 不安定地域には大陸の25%を占め、研究者が最も心配する地域である。降水の減少が水供給に深刻な影響を与えると見られるからだ。これら地域、特に東アフリカの一部では降水は最大で10%増えると予想されるが、他の地域、特に西アフリカ・南部アフリカでは減少する可能性が高い。南部アフリカは、特に破滅的状況が予想される。

 アフリカ中部・東部の大部分の国は、降水が10%ほど減少して不安定地域に入る。そうすると、源流域が不安定地域になるオレンジ川に依存する西部乾燥地域の大部分にも深刻な問題が起きる。東部の多くの地域では降水が増加するが、大部分はなお乾燥または不安定地域に属する。例えばソマリアの降水は大きく増加すると予想されるが、それでも国の大部分の降水は年400mm以下になる。同時に、不安定な高ナイル地域は降水パターンの変化で「非常に深刻な影響を受ける」ことになる。

 乾燥サハラと湿潤中央アフリカを分ける東部ー西部バンドも心配が大きい不安定地域である。ここには、非常に多くの人々が依存するセネガル・ニジェール・ヴォルタ・ナイル川やチャド湖などの多数の重要な水系がある。

 この研究を取り上げたガーディアン紙によると、研究を率いたMaarten de Wit氏は、「現在水がほとんどないこれら地域では、これは破滅的影響を与えることになる。水を得るために最も近い流れまで5km歩いているとすれば、30km歩くことになるか、家全体を動かすことになる」と言う。問題の深刻さが了解されよう。 水汲みのために5kmも歩かねばならない現状が、既に耐えられる限界を超えている。

 Forecast shows Africa to face river crisis,Guardain,3.3
 http://www.guardian.co.uk/climatechange/story/0,,1722475,00.html