ハリケーンの強度が増すのは海面水温上昇のためー強化された米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.18

 海面水温上昇がハリーケーンの強度を増すことを改めて確認する新たな研究が発表された。

 Hoyos C. D., Agudelo P. A., Webster P. J.& Curry J. A.,Deconvolution of the Factors Contributing to the Increase in Global Hurricane Intensity,Science, Published Online March 16 2006,
  (doi:10.1126/science.1123560. (2006):abstract)

 海面水温上昇が台風やハリケーンの強度を強めると考えるのはごく自然のことに思われる。ハリケーンや台風は海洋から蒸発する水がもたらす大量の渦巻く雲の形成で発生する。水温が高いほどそのエネルギーが大きくなると考えるのは自然だ。実際、この研究者たちは昨年9月、過去数十年の間に、世界中の嵐は必ずしも頻度を増しているわけではないが、海水温の上昇とともに強度を増しているとする論文を発表している。秒速56メートル以上の風速をもつカテゴリー4または5のハリケーンの比率が、1970年代には20%ほどだったが、過去10年には35%に上昇したと報告した。

 P. J. Webster, G. J. Holland, J. A. Curry, and H.-R. Chang,Changes in Tropical Cyclone Number, Duration, and Intensity in a Warming Environment,Science 16 September 2005: 1844-1846:abstract

  しかし、一部専門家は、風速・風向の異なる風が交じりあって様々な影響を及ぼすウインドシア(風の断層)と呼ばれる現象もこの趨勢に寄与しているのではないかと示唆したきた。また、温暖化、つまり海水温上昇よりも大気循環の自然変動の影響の方が大きいのではないかという研究者もいる。新たな研究を発表した研究者たちは、台風やハリケーンの強度の上昇は必ずしも海水温上昇のせいではなく、他の様々な[温暖化と無関係な]要因に関係しているのではないかという批判に曝されてきた。

 そこで、彼らは昨年発表したもともとの発見を、湿度、風の強度、大気循環といった他の要因と海水温の役割を比較する詳細な統計的分析にかけた。結論は、強度を増加させた支配的要因は、あらゆる海洋において海面水温の上昇であるというものだった。ハリケーンの強度が増してきた過去数十年、ウインドシアの増加の事実もなかった。

 この研究について報じるネイチャー・ニュースによると、研究チームの一員は、地球の気候変動の結果としての海面上昇と降水の増加とともに、このようなストームから生じる洪水のリスクが増すだろう、「一部の人々はニューオーリンズに戻らないだろう。彼らはそこから離れる。そして、一部の場所は保険がかけられなくなるだろう」と言う。海水温のさらなる上昇は、世界のハリケーン(台風、サイクロン)常襲沿岸地域を一層多くの破滅的嵐がめった打ちにすることを意味する。

 Warming seas cause stronger hurricanes,news@nature,3.16
 http://www.nature.com/news/2006/060313/full/060313-12.html

 その他のニュース記事
 Global warming blamed for increasing force of hurricanes,The Guardain,3.17
 http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1732718,00.html
 Storm Intensity Tied to Warming of Sea Surfaces,The Los Angeles Times,3.17
  http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-sci-hurricanes17mar17,1,2650570.story?coll=la-headlines-nation