中国初の気候変動評価報告 高まる水不足・災害の脅威 食料生産も減少の恐れ

農業情報研究所(WAPIC)

06.12.28

  中国科学技術部(MOST)が27日、MOSTと他の12の関係部局が作成にかかわった中国最初の気候変動評価報告を発表した。それは、来るべき数十年の間に中国の気温が大きく上昇、水不足や自然災害もますます深刻化すると予想、地球温暖化は国のさらなる開発や食料生産にとっての重大な脅威になると警告している。

 報告によると、中国の年間平均気温は、2020年までに2000年に比べて1.3℃から2.1℃上昇、今世紀半ばまでには3.3℃、2100年までには6℃上昇する。他方、降水量も劇的に増加し、2100年までに17%増加する。しかし、高温がそれ以上の蒸発を促す。干ばつ、熱波、その他の極端な異常気象に伴う自然災害も増える。

 現在水不足と干ばつが深刻な北部でも降水は増加するが、蒸発の増加で水不足はますます深刻化し、農民には何の助けにもならない。 南部では豪雨による地すべりや土砂崩れが増える。揚子江上流の豪雨は三峡ダム周辺地域での地すべりや土砂崩れの引き金を引く。漸く開通したチベットと東部を結ぶ鉄道も危険に曝される。一部のレールは年間を通して0℃以下の下層土の上に敷かれているから、気温上昇で溶け出すと運行の安全性が脅かされる。気温上昇は心臓病・血液病、マラリア、デング熱の増加につながる恐れもある。

 最も直接的な影響は農業・穀物生産に現れるだろう。気温上昇の農業への影響は、降水増加のプラスの影響が気温上昇や自然災害増加のマイナス影響を上回るかどうか不確かで、これまでのところはっきりしなかったが、報告は気温上昇と蒸発の影響が降水増加の影響を上回ると結論した。

 ロイターの報道によると、国家気候センターのLuo Yong次長は、「気候変動の最も直接的な影響は中国の穀物生産に対するものになるだろう」、「気候変動はわが国の農業と穀物生産への圧力を強めるだろう」と言う。Luo氏は、 中国の穀物生産高は、ますます荒れ狂う気候に適応した作物品種と農法がないかぎり、2030-2050年までに10%低下する恐れがあると示唆している。

 China fears disasters, grain cut from global warming,Reuters via Yahoo! News,12.27

 報告は、気候変動の影響が既に現れているとも指摘する。南西部の氷河は1950年代以来21%減った。中国主要河川の流量も過去50年の間に大きく減った。

 この報告とは別だが、26日付の新華網ニュースは、今週、揚子江中流の水位が記録的に下がっていると伝えている。江西省九江での水位がこの時期の正常なレベルよりも1.87m低い8.53mになり、中国最大の淡水湖・ポーヤン湖から毎日1億6000万トンの水を放水しているにもかかわらず、毎日5cmから10cmの率で低下しているという。安徽省安慶の港の水位は1.95mにまで落ち、航行が危険になっている。専門家は、上流の水と降水の減少のせいだとしている。

 Water level of Yangtze River hits record low,xinhua,2006-12-26

  今年の洪水等天候に関連した自然災害も1998年以来最悪、死者は2704人、経済的損害は2120億元(3兆円余り)に達したと報じられている。

 Disaster weather kills 2,704 this year,xinhua,12.28

 関連ニュース
 
Global warming could wreak havoc in China,China Daily,12.27
 
Temperatures to rise, water shortage to worsen?,xinhua,12.26
 
中国の気温、2020年までに1〜2度上昇と予測 人民網日本語版 12.28