米国気候変動科学計画 気候変動の米国農業・生態系への影響評価報告を発表
08.5.28
米国気候変動科学計画(CCSP)が27日、「気候変動の米国農業・土地資源・水資源・生物多様性への影響」に関する報告書を発表した。
http://www.climatescience.gov/Library/sap/sap4-3/default.php
この研究には、米国農務省(USDA)を含む気候と地球の変化に関係する13の連邦機関がかかわった。報告は、米国の生態系への気候の影響の最も広範囲にわたる研究の一つをなすという。
USDAが要約する主要な発見は次のとおりである。総じて、いいことはあまりなさそうだ。農業生産への好影響もなく、むしろ悪影響の方が大きそうだ。
・穀物と油料種子の成熟は速くなるが、気温の上昇により、とくに降水が減るか、変動が大きくなる場合には、不作のリスクが増える。
・高温が家畜に悪影響を与える。冬は暖かく、死亡する家畜の数は減るが、夏の暑さで死ぬ家畜はそれ以上に増える。高温は、家畜と乳用家畜の生産性を減らしもする。
・西部、南西部、アラスカの森林は、火災の規模と頻度、害虫の発生、樹木枯死率の増加など、既に気候変動の影響を受けているが、この変化が続くと予想される。
・20世紀全体を通じ、米国の大部分の地域では降水と流水が増え、干ばつの厳しさと継続期間が減ってきた。しかし、西部と南西部は例外で、これら地域では干ばつ条件が増えてきた。
・大気中の二酸化炭素の濃度の上昇で雑草の生長が速まる。雑草は北に向かって移動、除草剤の効き目は減る。
・山地の冠雪は減る傾向にあり、西部の春の融雪が早まっている。
・トマト、玉葱、果物などの園芸作物は、穀物と油料種子よりも気候変動に敏感である。
・肥沃な土壌の弱齢林は、大気中の二酸化炭素の濃度の上昇で生産性を増す。窒素堆積と気温上昇で、水が利用できる他のタイプの森林の生産性も増す。
・気候変動で外来草本種が乾燥地に侵入、火災の頻度を増やす。乾燥地の河川や河岸が悪影響を受ける。
・水利用の効率化への趨勢が続けば、気候変動の水資源への影響を和らげることができる。
・植物生長期間は、温帯全体で過去19年に10日から14日増えた。種の分布もシフトしてきた。
・最近数十年観察され、少なくとも来世紀にも予測される北極の急速な温暖化は、北極熊に棲家と食べ物を提供する雪と氷のカバーを劇的に減らしている。