ブラジルの大豆輸出 気候変動で2020年までに29%減少の恐れー新研究

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.11

  フィナンシャル・タイムズ紙によると、8月11日にサンパウロで開かれるアグリビジネス会合で、気候変動の結果、ブラジルの食料作物生産が2020年までに大きく減り、大豆輸出量も少なくとも29%減る恐れがあるという研究が発表される。

 Climate change threat to Brazil’s soya exports,FT.com,8.10
 http://www.ft.com/cms/s/0/62a5d5d0-670b-11dd-808f-0000779fd18c.html 
  または
 Climate change threat to Brazil’s food crop export.Financial Times,8.11,p.3

 食料需要の増加に供給増加が追いつかないことを基本的原因とする現在の食料価格高騰(それに伴う、とりわけ食料輸入国における食料危機)を抑えるためには食料作物の増産が不可欠であり、ブラジルはこの要請に応えることができる数少ないの国の一つとされてきた。危機解消はさらに遠のく恐れがある。とりわけ、急速に増える大豆需要をブラジルからの輸入で賄ってきた中国は、とんでもないピンチを迎えることになる。

 研究は、英国気象庁のハドレー気象予測研究センターで開発された気候変動モデルを、サンパウロの大学・Unicampと、ブラジル政府農業研究所・Embrapaの研究者がブラジルの5562の全地方自治体に適用した。

 それは、1961−1990年の平均気温をベースラインに、これが2020年までに1℃から2℃上昇するという最善および最悪のシナリオの下で、ブラジル各地における様々な気温変化率を考慮した。サンパウロ州の農業地域など、ブラジルの一部では、既に気温はベースラインを1℃ほど超えている。

 研究によると、ブラジルの6つの食料作物―米、コーヒー、豆類、キャッサバ、トウモロコシ、大豆―の生産額は、平均気温が1℃から2℃上昇すると、65億レアル(40億ドル)から71レアル減少する可能性がある。

 最も深刻な損害を受けるのは大豆で、大豆栽培適地の量は、温室効果ガス排出削減の行動が取られると仮定した最善のシナリオの下で21%、温室効果ガス排出が現在のレートで続く場合には24%減少する。

 その結果、最善のシナリオの下で、現在の5240万トンの大豆生産は1130万トン減ることになる。ブラジルは昨年、3850万トンの大豆、大豆ミール、大豆油を輸出した。ブラジル政府が国内消費を超える分だけを輸出するという政策を維持すると仮定すると、輸出は2020年までに最低でも29%減少することになる。 

 対照的に、サトウキビは、高温と大気中の二酸化炭素の増加のお陰で劇的に増加する。

 研究者によると、報告はブラジルで栽培される最も先進的な作物品種に基づくが、高温に耐える新たな品種の開発で損害を減らすことができる。ただ、2℃以上の平均気温上昇に耐えられる作物はほとんどないと言う。

 研究は2050年と2070年までの気候変動の影響も検討した。最善のシナリオで、6つの作物の生産額は、それぞれ93億レアル、110億レアル減少する。ただし、2050年の先の予測は信頼できないという。