オーストラリア 1月末の熱波で数百人が死亡 ブッシュファイアー以上の大災害

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.22

 埼玉県川口市が、「地球温暖化」という表現が環境被害の深刻さを的確に表していないとして、4月から「地球高温化」という用語に言い換え、環境総務課に「地球高温化対策係」を新設するそうである(東京新聞 2月23日 朝刊)。「温暖化」の表現は、今では「高温化」だけを意味するものではなくなっているが、「温暖化」の言葉でともすれば忘れがちな「高温化」の恐怖を改めて思い出させるためには、こんな言い換えにも意味があるかもしれない。

 1月末の3日間の記録的熱波のために、メルボルンで100人、南部−東部オーストラリア全体で200人以上の人々が亡くなった。大部分の犠牲者は、しばしば一人暮らしか、突然心臓発作に見舞われた心臓病の高齢者、あるいは慢性病を持つ人だった。200人以上の死者を出したブッシュファイアーに襲われたビクトリア州の救急事業部長は、人々は熱波のことは忘れていたが、その影響はブッシュファイアー以上に大きいと言う。

 Heatwave left hundreds dead,smh,2.22
 http://www.theage.com.au/national/heatwave-left-hundreds-dead-20090221-8ea4.html?page=-1

 3日間の記録的熱波は、最高気温43.4℃を記録した1月28日(水曜日)に始まった。翌日の最高気温は44.3℃、30日(金曜日)には45.1℃にまで上がった。3日連続で43℃を突破したのはメルボルンでは初めてのことだ。

 メルボルン近郊にあるモナッシュ大学のニコルス教授とその同僚たちは、メルボルンのデータによると、一日の平均気温が30℃を超えると65歳以上の人々の死亡が少なくとも15%増えるという論文を昨年発表した。水曜日から金曜日までの熱波の3日間、メルボルンの一日平均気温は、30℃を5℃以上上回った。

 そのニコルス教授が翌週月曜日と火曜日の死亡通知を分析、前週の月曜日・火曜日と比較した。死者は45%―少なくともメルボルンで100人、南部−東部オーストラリア全体で200人ー増えたと推定された。気候変動や熱波・ブッシュファイアーなどの極端な事象に関する第一級の専門家である教授は、「1月末の熱波は人間の悲劇だった」と言う。

 ビクトリア州の救急サービスは、熱波の間、大災害モードになり、史上最高の忙しさだった。メルボルンの救急出動は1600回、通常の800回の2倍に跳ね上がった。熱波の影響は、州の一部で停電、エアコンが働かなくなったことで一層大きくなった。熱波による死者は、ニコルス教授の推定以上になる可能性もある。検死官局のデータでは、この期間に報告された死は、昨年同期の2.5倍となっている。

 3日間の熱波が保健システムに過大な負担を課し、霊安室の能力も満杯になってしまったことを受け、厚生局(Department of Human Services)と州検死官局は、暑さに関連した死をいかにして減らすか、別々に研究を始めたという。


 オーストラリアにとっても難題だが、ただでさえ医療制度が機能不全に陥っている日本、「高温化」そのものを防ぐ以外の対策は考えられないだろう。