米国EPA 温室効果ガスは人間の健康と福祉に有害 排出規制権限を漸く手に

農業情報研究所(WAPIC)

09.3.18

  米国環境保護庁(EPA)が17日、2007年に連邦最高裁が命じた科学的レビューを通して、温室効果ガスは大気浄化法(Clean Air Act.)の意味での公衆の健康と福祉を危険にさらす恐れがあることを発見したと発表した。

 EPA Finds Greenhouse Gases Pose Threat to Public Health, Welfare,EPA News Release,4.17
 http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/0/0EF7DF675805295D8525759B00566924

 ブッシュ政権の下、EPAは、二酸化炭素など温室効果ガスは、EPAが所管する大気浄化法の意味での人間の健康を脅かすものではないから規制(権限)の対象外であるとして、その排出削減の取り組みを、断固として拒否してきた。今回の発見は特段目新しいものとは思えないが、政権が替わると科学的結論も変わるらしい。発見がパブリックコメントを経て最終的に確認されれば、EPAは、温室効果ガス排出規制の権限を初めて手にすることになる。

 公衆の健康と福祉に悪影響があり得ることが”発見”された温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、 六フッ化硫黄の6種類である。これらのガスの濃度は人間の排出の結果として前例のないラベルになっていること、またこのような高濃度が平均気温の上昇やその他の気候の変化の原因にとなっている可能性が非常に高いことは、科学が明確に示しているという。

 また、科学的分析は、気候変動がいくつかの経路で人間の健康にも影響を与えることも確認しているという。たとえば、気候変動が有害な地表オゾンの濃度の上昇につながることを示唆する研究がある。その他、これらに限られないもの、干ばつの増加、豪雨や洪水の増加、熱波や林野火災の頻度と強度の増加、海面上昇、ストームの強度の増加、水資源・農業・野生動物・生態系への危害などの影響がある。

 発見は、気候変動が貧しい人、若年者、高齢者、既に健康を害している人、障害者、一人住まいの人、先住民など、人口の一定部分に特に重大な影響を与えることも考慮したという。さらに、科学が発見した危険には、国家安全保障にかかわるものも含まれる。気候変動に追い立てられる水などの資源の欠乏が大量の移住に駆り立て、世界の不安定地域をますます不安定にする。

 (もっと詳しくは、http://epa.gov/climatechange/endangerment.html

 ともあれ、オバマ政府は、気候変動との闘いで決定的に重要な手段を手にすることになる。

  関連ニュース・論評
 
E.P.A. Clears the Way for Regulation of Warming Gases,The New York Times,4.18
 http://www.nytimes.com/2009/04/18/science/earth/18endanger.html?_r=1&ref=us
  US environment agency declares greenhouse gases a threat,Nature News,4.17
  http://www.nature.com/news/2009/090417/full/news.2009.374.html

  The EPA Readies a Hammer,The Washington Post,4.17
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/04/16/AR2009041603947.html?wpisrc=newsletter
  US clears way for carbon emissions regulations,FT.com,4.17
  http://www.ft.com/cms/s/0/bdf0423c-2b77-11de-b806-00144feabdc0.html
  US breaks with 'climate change denial',The Guardian,4.17
  http://www.guardian.co.uk/environment/2009/apr/17/obama-administration-emissions-warning

  Obama to regulate 'pollutant' CO2,BBC News,4.17
  http://news.bbc.co.uk/2/low/science/nature/8004975.stm
  Aux Etats-Unis, le CO2 est reconnu dangereux pour la santé publique,Le Monde,4.17
  http://www.lemonde.fr/planete/article/2009/04/17/aux-etats-unis-le-co2-est-reconnu-dangereux-pour-la-sante-publique_1182247_3244.html#ens_id=1099506