ディーゼルや焚き火から出る”すす”がヒマラヤ氷河の融解と地球温暖化を加速

農業情報研究所(WAPIC)

09.10.5

 インドと中国の科学者によると、ディーゼル燃料や木材の燃焼から発生する”すすの雲”が、世界人口のほぼ半分が依存する水系を涵養するヒマラヤとチベットの氷河の融解を加速している。

 英国のObserver(Guardian)紙が4日付で伝えるところによると、カシミールで今月発表される予定の科学者の研究が、旧式のディーゼルエンジンや調理用の薪・作物残滓・牛糞などの燃料の燃焼から排出される”ブラックカーボン”と呼ばれる炭素の微粒子が、ヒマラヤにおける”氷河の融解に影響を与えていることは間違いない”ことを明らかにしている。

 地球温暖化に対する二酸化炭素の脅威は認められてきたが、途上国で発生する”すす”は、気温上昇の原因として大方が認めるところとはならなかった。しかし、デリーのエネルギー・資源研究所のSyed Hasnain教授によると、ブラックカーボンが氷河の上に落ちれば、さもなければ雪によって反射される日光を氷河が吸収することになる。”これは我々が軽視している巨大な問題だ”。

 中国のチベット高原研究所は今年8月、氷河面積は2070年までに43%減ると予測、ブラックカーボンの氷河融解への影響を認める科学者が増えていると発表した。国連環境計画も今月、ブラックカーボン産出の削減を要請、11月には、地球温暖化は、半分は二酸化炭素以外の汚染物質から生じるという報告を公表する。

 ブラックカーボンは、原始的調理ストーブを近代的なものに変えたり、ヒマラヤ地域の自動車交通規制などで、比較的容易に削減できる。

 しかし、教授によると、世界のブラックカーボンのおよそ3分の1を生み出すがインドと中国は、両国とも、なかなか対策を講じようとしない。何故かは知らないが、この報道によると、専門家は、中国政府もインド政府も、先進国が責任を負うべき二酸化炭素排出削減から注意が逸らされるのを恐れ、ブラックカーボン問題への取り組みをためらっている、と言っているそうである。

 Soot clouds pose threat to Himalayan glaciers,The Observer,10.4
 http://www.guardian.co.uk/environment/2009/oct/04/climate-change-melting-himalayan-glaciers

 ともあれ、時間は無為に過ぎて行く。そのうち、誰の責任だったかを決める”歴史”自体も”終焉”を迎えるかもしれない。

 Time running out in global warming fight: Charles(AFP),The Times of India,09.4.27
  http://timesofindia.indiatimes.com/Health--Science/Earth/Time-running-out-in-global-warming-fight-Charles/articleshow/4455859.cms