輸送部門のCO2排出 2050年まに40%削減の道筋を探るIEA新報告

農業情報研究所(WAPIC)

09.10.28

 国際エネルギー機関(IEA)が10月27日、2050年までに輸送部門からの二酸化炭素(CO2)排出を大きく減らす道筋を探る新たな報告書を公刊した。

 TRANSPORT, ENERGY AND CO2: MOVING TOWARD SUSTAINABILITY,IEA,27 October 2009
  http://www.iea.org/index_info.asp?id=752

 気候変動政府間パネル(IPCC)によれば、気候変動の最悪の影響を回避するためには、世界全体のCO2排出を2050年までに少なくとも半減させねばならない。このCO2排出削減には、輸送部門が大きな役割を演じなければならない。世界のエネルギー利用の19%が輸送部門によるもので、輸送部門はエネルギー関連CO2の23%を排出する。

 ところが、世界の自動車保有台数は2050年までに3倍(20億台)に増えると予想される。トラック輸送は2倍、航空移動は4倍に増える。何らかの対策が講じられないかぎり、輸送エネルギー使用とCO2排出は、2030年までに50%、2050年までには80%増加すると予想される。これでは、2050年までに必要とされる世界のCO2排出削減は到底実現できない。

 しかし、”Transport, Energy and CO2: Moving Toward Sustainability”と題する新たな報告によると、自動車燃費の改善やプラグインハイブリッド車(PHEVs)、電気自動車(EVs)、燃料電池車などの先進的な技術や燃料の導入で、CO2排出は2050年まに2005年レベルより30%減らすことができる(Blue Map Scenario)。

 2050年までに軽量自動車の販売が支配的になるまでにEVsとPHEVsのコストが下がり、パフォーマンスが上がれば、燃料電池車なしでも同様な成果が得られる(Bkue EV Success Scenario)。

 旅行がもっと効率的なモードに変わり、土地利用計画改善、情報技術の一層の利用、自動車による移動の必要性を減らすその他の措置によって旅行そのものがある程度減らせれば、エネルギー使用とCO2排出は20%減らせる(Blue Shift Scenario)。

 Blue Map ScenarioとBlue Shift Scenarioを合わせれば、2050年のCO2排出は、2005年レベルより40%減らせるという。

 同時に発表された報道発表によると、田中伸男事務局長は、「第一に優先されるべきは、現在コスト効率的な技術と慣行の採用だ。これは自動車燃費の大きな改善につながる。我々は、新たな軽量自動車について、2030年までに50%の改善を目指す」と言う。また、都市開発の方法の改善を強力に推進し、新世代都市・都市間交通システムへの投資によって、旅行の仕方を大きく変えるべきとも言う。 

 しかし、これだけでは十分ではない。2050年までにCO2排出を半減させるためには電気、バイオ燃料、水素の一定のコンビネーションに基づく”技術革命”が必要になる。これらの燃料のどれをとっても、利用を大きく増やすには、インフラやコストも含め、大きな障害がある。特にバイオ燃料の場合には、真に持続可能な原料(報告は、リグノセルロースが最善と見られるが、なお研究が必要としている)を確保する必要があると言う。

 報告によると、このようなCO2削減は、恐らくは社会にとって低いコストで達成できる。先進技術のコストは、生産と利用の増加からの学習の結果として、時間とともに減っていく。一定のコスト(少なくとも、CO2トンあたり200米ドル)は不可避だが、脱炭素にはエネルギー安全保障の利益もあると強調する。