土壌保全的農業支援が最も安上がりの温室効果ガス削減策 飢餓削減にも貢献 FAO政策ブリーフ

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.2

  コペンハーゲンで7日に開幕する第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)を前に、国連食糧農業機関(FAO)が12月1日、炭素を捕らえ・農地土壌に貯留する農業慣行は、途上国においてすぐに利用でき・かつ最も費用効率的な温室効果ガス排出削減策とともに、気候変動への適応と食料安全保障改善を助ける手段も提供するという政策ブリーフを発表した。

 Harvesting agriculture’s multiple benefits:Mitigation, Adaptation,Development and Food Security
 ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/012/ak914e/ak914e00.pdf
 FAO News:Addressing climate change and food security together,12.1
 http://www.fao.org/news/story/en/item/37840/icode/

 ブリーフによると、農業は気候変動から被害を受けるだけでなく、世界の温室効果ガスの14%を排出してもいる。しかし、農業は、世界の排出の大きな部分を減らしたり・除去したりする潜在能力を持っている。そして、この能力の70%は途上国で実現される。

  有機農業や土壌保全農業を含む一定の農業慣行は、炭素を捕らえ、これを土壌に貯留する。これらの慣行には、不・低耕起、作物残滓のコンポストやマルチングへの利用、土壌を覆う永年作物の利用、草地での再播種や放牧管理の改善、アグロフォレストリィなどが含まれる。農業が持つ温室効果ガス排出削減または大気中の温室効果ガス除去の能力の90%は、このような慣行から来る。

 また、一層効率的な肥料使用や家畜管理システムも有望な温室効果ガス排出削減・除去手段となる。これらの活動の多くは、これに関連した生産性の向上によって森林の破壊や劣化も減らすだろう―農業の森林への拡大なしで、より多くの食料を生産できる。

 FAOのアレクサンダー・ミューラー事務局長補佐は、「農業は温室効果ガス排出のためのたやすく利用でき、費用効率的な選択肢を提供し、いますぐスタートさせることができる。農業をターゲットとする気候資金供給メカニズムは、排出を削減し、気候変動に適応する努力をスピードアップできる一方、飢餓と貧困を減らすのも助ける」と言う(対照的に、他の部門では、高価な技術や新たな・長期的研究への投資を必要とする場合がある)。

 それにもかかわらず、農業をターゲットとする資金供給メカニズムは、コペンハーゲンでの論議の対象からほとんど外されている。こうして、FAOは、「気候変動と食料安全保障の二重の挑戦に途上国が一層包括的に対応することを助ける資金の供給」を要請する。このような支援は、排出削減と適応を目指す行動に報いる一方、農業開発と食料安全保障の改善を促進するという。 


 わが国の行政刷新会議仕分けグループは、このような農業慣行の定着・普及を目指す農水省のモデル事業予算を無駄として「廃止」してしまった。COP15も同じことを繰り返すのだろうか。こんな資金供給は、巨大企業には何の利益ももたらしそうにない。