山地の生態系保全と持続可能な発展ー国際山岳年が始動

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農業情報研究所(WAPIC)

02.2.20

 国連食糧農業機関(FAO)が主導する国際山岳年が始動した(国際山岳年についての詳細は国際山岳年日本委員会事務局・ホームページ・http://www.iym-japan.org/)。その背景や意義の理解のために、ここで、2月15日に発せられたFAOのプレス・リリース(FAO launch of the International Year of Mountains ,02.2.15)を要約、紹介することにする。 

 栄養不良と飢餓に悩む世界の人口の中で、山地住民は最大の比率を占める。多くの山岳地域で危機が高まっており、2000年に世界食糧計画(WFP)から緊急援助を受け取った81カ国中、51カ国が山岳国である。世界の慢性的栄養不良人口は8億人と推計されるが、山地住民に特別の注意を払えば、世界の飢餓・栄養不良人口は大きく減ると予測される。

 1996年の世界食糧サミットでは飢餓撲滅に向けての行動が約束され、重要な第一歩として、2015年までに飢餓人口を半減させる目標が設けられた。しかし、現在のデータが示すところでは、栄養不良人口は年間600万人のペースでしか減少しておらず、目標達成に必要な年2200万人を下回っている。もし山地コミュニティの条件を改善できれば、この重要な目的の達成に向かって前進できよう。

 10人に1人、6億人が山岳地域に住んでいる。先進国の裕福なリゾート山岳地域や郊外山岳地域を除き、大多数の山地住民が慢性的な栄養不良状態にある。

 この厳しい現実の理由は複雑であるが、貧困と政治的阻害が最大の要因である。例えば、山地資源の管理に関する政策や決定ははるかに離れたところでなされ、山地コミュニティに住む人々の影響力と権限は最小限にされている。それに加え、山地住民は土地の起伏、貧しい交通システム、不適切な道路のような大きな物理的障害に直面している。しかし、現在、山地コミュニティの条件を改善するための最大の障害は武力紛争である。世界の大部分の武力紛争が山岳地域で起きている。1999年の27の武力紛争中、23が山岳地域で起きている。戦争状態の中では確かな食糧生産はできない。

 FAOは世界山岳年の主導機関である。そのパートナーには、国連諸機関、NGO、山地フォーラム、山地住民組織、50以上の、そして今後さらに増える国際山岳年国内委員会が含まれる。

 FAOは、長期的で着実な行動を鼓舞するとともに、国際山岳年に貢献する国内委員会の創設と進行中の努力を支援する。

 山岳地域は地球上の生命にとって死活的に重要である。それは、世界の人口の少なくとも10分の1にとってのわが家であり、生物多様性・鉱物・森林の源であり、世界の大河川の源である。30億人以上が、食物を育て、発電し、工業を支えるために、また最も重要なこととして、飲み水を得るために、淡水を山地に依存している。

 国連は、山地の生態系の地球的規模での重要性と山地住民が直面する困難について啓発すべく、2002年を国際山岳年と宣言した。これは、1992年のリオ・デジャネイロの国連環境・開発会議に発する前例のない機会であり、このときのアジェンダ21の第13章は山岳地域に焦点を当てている。

 国際山岳年の国内行事は決定的に重要である。山岳地域の持続可能な発展を促し、決定過程への山地住民の完全な参加を保証するための法と政策を発展させる権限は各国にあるからである。山地住民は山地の生態系の「執事」であり、その破壊の影響を直接受ける人々である。その知識、視点、参加は山地の環境を保護し、飢餓を和らげるための努力の成功に不可欠である。

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