WWF、「エコ・シティー」建設へ 今の生活スタイルでは自然資源はもたない

農業情報研究所(WAPIC)

04.11.24

 世界野生動物基金(WWF、World Wildlife Fund)が18日、地球上の人々は地球の自然資源を更新可能な速さよりも20%速く消費しており、生物種の喪失を加速し、将来の決定的な資源不足を招くだろうという新たな研究報告を発表した(Living Planet Report 2004)。主として米国やその他のエネルギーと物質の消費のために、我々が消費する自然資源の量で測定された人間が必要とする自然のサイズは過去40年で2.5倍に増加、それと同量の主要環境価値が失われたという。

 世界には63億人の人々の必要を満たす280億エーカー(1エーカー=0.4ヘクタール)の生産的な土地と海洋がある(一人当たり平均4.4エーカー)。しかし、現在の消費の率では、一人当たり平均5.4ヘクタールが必要であり、持続可能なレベルよりも20%多い。これはもちろん、地域や国で異なり、平均的米国人が毎年消費する自然資源を生み出すための土地と海の面積は23.5エーカーになるが、平均的アフリカ人については2.5エーカーにしかならない。エネルギー消費については、特に米国、しかしまた西欧が大部分の不均衡要因を生み出している。化石燃料の利用が中心のエネルギーにかかわる必要面積の構成要素は、61年から01年までの40年間で700%近く増大した。

 報告は、消費の測定に加え、1,100の陸地・淡水域・海水域生物種の個体数の趨勢を追う指数も示しており、これは70年から00年の間に40%低下した。淡水域種も最も影響を受け、50%低下、陸地種は30%低下した。消費の種の消滅への影響は明らかという。WWFは、地球が持つ能力内で生活する方法の発見が社会の急務であり、しかも手遅れになる前に発見しなければならないと主張する。報告は、高い生活水準を維持しながらこれを実現するために、地球温暖化を抑制するための更新可能で汚染のない代替エネルギーへの転換、一層包括的なリサイクルと廃棄物削減のプログラムの創造、一層の公共輸送の奨励やエネルギー効率改善につながり得る建築や製品デザインの実施などを勧告する。これは、人々の生活スタイルが改められねばならばいことを意味する。

 しかし、それ自体をどう実現するかが難題だ。WWFは、現在(17−25日)タイのバンコクで開かれている世界自然保護会議で、この問題に挑戦するための”One Planet Living' initiative”の青写真を発表、第一歩として、ポルトガルの首都・リスボンの南部の4,340ヘクタールの土地に、生活スタイルの変更を実現するための”エコ・シティー”を建設するという(Towards Alternative Cities, the Green-Friendly Way,IPS,11.19)。WWF関係者は、「我々は人々が持続可能な仕方で生活するための、そして手頃で快適な一連の旗艦コミュニティーの建設を目指す」、「これらコミュニティーでは近代的な生活の質は犠牲にならないだろう。それはファミリー・フレンドリーになる」と語った。

 このような環境に優しい生活の推進は、過去20年、新たな建築モデルを生み出してきたが、この新たな行動は計画されるコミュニティーが環境的価値に取り組むスケールにおいてそれらと異なる。WWF理事長のクロード・マーチン氏は、IPSに対し、「目的は、生活の多様な側面を、建築資材、エネルギー、食料、輸送の利用を含むハウジングの構想に統合することだ。80年代のソーラーパネルを持つ省エネハウスより全体的なものだ」と語ったという。これは、WWFの構想の主要なパートナーであるポルトガルのディベロッパーが描く絵に反映されており、これには持続可能な資材の利用、炭素と廃棄物の発生の削減、更新可能なエネルギーの促進、そして何よりも食料の地方資源への転換の約定が含まれる。

 持続可能な資材に関しては、毒性物質の90%以上の排除に加え、ビル建設のためにセメントなどの持続可能な資材を50%以上利用する。  

 炭素排出の削減のために、デベロッパーは廃棄物の25%がリサイクルされるように保証する。エネルギー効率確保のために、将来のコミュニティーは化石燃料を離れ、「太陽熱、小規模バイオマス暖房、冷房のための池を含む建築デザインに光電装置」を持つようにする。 

 ポルトガルだけでなく、ヨーロッパの他の地域、オーストラリア、英国、米国、南アフリカでも、このようなコミュニティー創出が既に受け入れられ、中国の当局者さえ関心を示している。このような草分け的試みが完了したのち、WWFは07年までに一層広範でグローバルな第二段階を開始、アジア、アフリカ、東欧、ラテンアメリカの国々に広がるのを期待しているという。

 持続可能な生活スタイルへの変更は、その必要性を説き、認識するだけでは実現しない。それを可能にする「空間」(唯物論の再認識)が不可欠だ。空間の中の「モノ」の生産だけではなく、空間そのものの生産が革新される必要がある。多くの建築家、都市計画家が試みてきたが、結局は「資本」の論理に敗北してきたこの試み、地球の危機のなかで今度こそ花開くのだろうか。