米海洋大気局 ハワイのクジラ座礁の”もっともらしい”原因は海軍ソナーと結論

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.2

 世界各地でクジラが異例の場所で現れたり、浜に乗り上げる事件が最近増えている。原因は分かっていない。しかし、少なくとも一部は、敵艦を探査するための海軍のソナーがクジラの方向感覚を狂わせているのではないかと疑われてきた。ワシントン・ポスト紙によると、米国海洋大気局(NOAA)の科学者の最新の研究が、その疑いを”もっともらしい”とする新たな例を発見した。

 それによると、NOAAは4月27日、2004年にハワイ・カウアイ島のハナレイベイで起きたカズハゴンドウ(クジラ)の浜への打ち上げの原因は海軍のソナーであるらしいと結論する報告を出した。普段はハナレイベイの深海を泳いでいる200頭ものこのクジラが現れたとき、近くの米海軍ミサイル評価施設で大規模な米・日ソナー訓練演習が行われていた。伝統的な中周波海軍ソナーのクジラの座礁との関連を調べる一連の科学的レビューが行われてきたが、クジラの座礁と数十年使われてきたソナーの外見上の関連が確認されたのはこれが初めてだ。報告は、ソナーが座礁を引き起こしたとは断定できないが、大量の研究が他のありそうな原因はないという結論に導いたという。

 Sonar Called Likely Stranding Cause,The Washington Post,4.28
 http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/04/27/AR2006042702084.html

  研究を率いたNOAA漁業局のテリー・ロウルズ氏は、「我々の分析は、クジラの湾への移動やグループが湾に継続したとどまったことを説明するいかなる重要な天候・自然海洋学的事象、あるいは既知の生物学的要因はなかったことを示唆している」、NOAAは、ソナーが座礁に”寄与したありそうなではないにしても、もっともらしい(plausible)要因”と結論したと言う。

 海軍は否定的見方をしているが、7月に同じ海域で別の大規模ソナー試験を計画しており、NOAAはソナーのあり得る影響からクジラを護るための拡大措置を利用するように公式に要請したという。

 海軍が使用するアクティブ・ソナー(ソナー自身が音波を発進して反射した反響音を調べる ソナー)は、クジラ、特にオオギハクジラやカズハゴンドウのような深海を泳ぐクジラを驚かせ、方向を間違えさえるように見える大きな鋭い音を発する。この影響は、1996年のギリシャ沖で記録され、その後、バハマやカナリー諸島沖、スペイン沖での海軍演習の間にも確認された。

 この発見は、ノースカロライナ沖の500平方マイルの海上ソナー訓練施設を立ち上げる海軍を困惑させている。海軍当局は、特に敵対的であり得る外国海軍が大きな原子力潜水艦を追うために使用されるパッシブ・ソナー(周囲の音波を調べるソナー)では発見できないジーゼル潜水艦を開発している今、ソナー訓練は不可欠だと言う。

 しかし、ロウルズ氏は、ハワイでのカズハゴンドウの座礁は非常に異例なことで、米国の近代史で2回目の記録に過ぎない、もう一つは今年初めにフロリダ沖で起きたもので、この地域で海軍の活動があったかどうか調査中と言う。

 2000年のバハマでの座礁に際しては、同国の海洋生物学者が陸上で死んだ何頭かのクジラを集め、後の研究のために冷凍保存した。これがソナーがありそうな原因と結論するのを助けた。しかし、ハワイではクジラは最終的には海に戻され、若い1頭だけが飢餓と見られる原因で死んだ。従って、物的証拠はない。NOAAは、この座礁については、他のあり得る原因がないこと、クジラの移動の異常な特徴、当時クジラがハナレイベイに泳ぎ着くに十分に近いところで大量のソナーが使われれたと結論する分析に基づき、このように結論したのだという。