ガーリック・マスタード(ハーブ)が他の植物や樹木を殺しつつあるーカナダの研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.17

  カナダ・ゲルフ大学の研究者が、ハーブの一種として料理やガーデニングに使われるガーリック・マスタード(Alliaria petiolata)がオンタリオ、ケベック、沿岸諸州の植物、樹木までも殺しつつあることを発見した。大部分の植物は根から菌を産出、土壌から栄養分を摂っている。しかし、ガーリック・マスタードは、殺菌剤として作用し、それが取り除かれた後にも長い間土壌中に残存する化学物質を生産する。これが近隣植物・樹木に栄養分を供給する菌を殺してしまうのだという。

 Researchers warn of toxic weed,Canada.com,5.14
 http://www.canada.com/topics/news/national/story.html?id=bab237f3-230a-46be-b4fe-955244c0c07b&k=83789

 研究チームの一員であるJohn Klironomos教授は、このヨーロッパの雑草は特に根絶が難しい侵略者だ、「このガーリック・マスタードが一度これらの成分を生産し、地域に入り込めば、この雑草を除去しても成分はなお土壌中に残り、地域のいかなる土着植物も植えるのが難しくなる」と語ったという。

 ガーリック・マスタードはオンタリオより西には未だそう広がっていないが、米国ではニューイングランドと中西部で問題になっており、フロリダのような南部にまで侵入した。オンタリオでは オタワのような北部で目立っているが、特にナイヤガラ地域で多い。オンタリオ自然資源省の植物学者・Mike Oldham氏は、州花のエンレイソウ(延齢草)を荒廃させつつあると恐れている。

 しかし、彼は、ガーリック・マスタードのガーデンからの一掃を急ぐなと警告する。種があるときに抜き取れば、種を一層拡散させることになる。ガーリック・マスタードの通常の開花期である4月から5月半ばには種ができていないから安全に抜き取ることができる。しかし、その後になれば、除草、踏み潰し、そして堆肥製造さえも、芝やガーデンに一層の種を播くことを意味するという。

 ガーリック・マスタードを取り除いた2年後にメープルの実生苗を植えた別の実験では、苗はガーリック・マスタードが未だあるかのように同じ程度の損傷を受けた。彼は、一層の研究が必要だが、メープルの古木が枯れ始め、他の樹種に置き換わることもない最悪のシナリオを描いている。このリスクは、雑草が州南部の森林を一面に覆っているオンタリオで特に高いと言う。

 日本にどれほどのガーリック・マスタードが入り込んいるのかは知らない。しかし、料理と結びつたハーブ・ガーデニングブームのなかで、静かに広がっている可能性はある。ガーデニングも結構だが、注意が必要かもしれない。