中国初のグリーンGDP計算報告 経済成長パターンの転換を迫る

農業情報研究所(WAPIC)

06.9.12

 中国の国家環境保護総局(SEPA)と国家統計局(NBS)が8日、中国で初めてとなる環境損失で調整された国内総生産(GDP)に関する報告・「中国グリーン国民経済計算研究報告2004」を発表した。12日付の新華網が掲載した中国環境計画アカデミー提供の詳報によると、環境汚染が2004年に引き起こした経済的損失は5118億元でGDPの3.05%、汚染軽減・管理のために必要な費用(機会費用)は2874元で 、GDPの1.80%に上る。それでも計算された環境損失は、なおSEPAの体制や技術的限界のために実際のごく一部を示すにすぎないという。それは、”高成長、高汚染、高リスク”で特徴づけられる中国の経済成長パターンの早急な転換を迫る。

 Green GDP Accounting Study Report 2004 issued,xinhua,9.12
 http://news.xinhuanet.com/english/2006-09/12/content_5080669.htm 

 SEAPとNBSの研究は2004年8月に始まった。過去2年間、技術チームは東部、中部、西部の42の産業と3つの地域についての環境汚染、機会処理費用、環境退化のコストの定量分析を行った。その結果、環境汚染が2004年に引き起こした経済的損失は5118億元でGDPの3.05%に上ることが分かった。水汚染、大気汚染、固形廃棄物と汚染事故による環境コストがそれぞれ2862億8000元(総コストの55.9%)、2198億元(42.9%)、57億4000元(1.2%)だった。

  しかし、これは総合環境・経済計算システムがカバーすべきコストの一部を計算したにすぎない。このシステムは少なくとも5つのタイプの自然資源(土地、ミネラル、森林、水、漁業資源)の退化のコストと2つのタイプの環境退化(環境汚染と生態系損傷)のコストをカバーすべきものであるが、基本データと技術的方法の制約のために、自然資源退化と生態系損傷のコストは含まない環境汚染コストを示すだけのものとなった。

 その環境汚染コストも、20項目を含むべきものだが、今回の計算に含まれたのは、10項目(大気汚染が引き起こす健康・農業・物的損失、水汚染が引き起こす健康と工業・農業生産の損失、固形廃棄物による土地占拠が引き起こす経済的損失など)にすぎない。地下水、土壌汚染、その他の重要項目は含まれない。さらに、計算された10項目のコストのなかにも、一部は過少評価されたり、見過ごされたものがある。

 それでも、環境汚染コストがGDPの3.05%にもなったことは、環境汚染が非常に深刻であることを示すという。

 環境汚染コストと別に、汚染物質排出量と処理コストも計算された。計算結果は、もし排出汚染物質すべてが2004年に処理されたとすれば、GDPの7%にも相当する1兆800億元の直接投資が必要になったであろうことを示した。その上、2874億元(GDPの1.8%)の機会費用が生まれる。しかし、実際には第10次計画期間の汚染軽減・管理費用はGDPの1.18%を数えるだけだった。

 報告者によると、”高成長、高汚染、高リスク”で特徴づけられる経済成長は中国独自の歴史的意義を持つとはいえ、中国経済は資源とエネルギーのボトルネックの時代になり、資源消尽のリスクに耐えることはできない、また中国社会は一人当たりGDPが1000ドルから3000ドルになり、環境汚染が引き起こすいかなる社会問題にも耐えられない様々な紛争突発の時期に入った。

 中国共産党中央委員会は、科学的発展、調和的中国社会の建設、資源保全的で環境に優しい社会の建設の構想を提案した。これは、中国の政治概念の重要な昇華を意味し、中国の経済成長のパターンが伝統的工業化から新たな工業化に変わる好機を提供する。しかし、好ましい概念やイデオロギーも、包括的または客観的な経済成長測定システムがなければ、すべて絵に描いた餅に終わる。

 とはいえ、完全なグリーンGDP計算システムの完成には長い時間がかかる。しかし、それを待っていたのでは手遅れになるだろう。報告者は、困難な問題に一つ一つ挑戦せねばならない、一つのプロジェクトが実施されれば、一つの問題に挑戦する、一つの問題が解決されたら、それを公衆に向けて発表すると言う。

 SEPAは、他の関係局と共同、継続中の全国規模の3つの基本的調査ー汚染源調査、地下水汚染調査、土壌汚染調査を実施するだろう、さらに全体的な環境退化の計算の基礎とするための生態系損傷調査も近々始動させる、また、計算結果を利用することにより環境・経済管理政策をいかに案出するかの研究にも重点を置くという。