米国環境保護庁 70年来の洪水防止事業に幕 湿地・水質・希少絶滅危惧種を護る

農業情報研究所(WAPIC)

08.9.4

  米国環境保護庁(EPA)が9月2日、議会承認から実に70年近く経ちながら進捗状況が捗捗しくない陸軍工兵隊のミシシッピ洪水制御プロジェクトの禁止を最終的に決定した。この決定は、このプロジェクトが広大な湿地を破壊し、水質悪化を招き、希少・絶滅危惧種の生息地を害する恐れがあるとする詳細な環境影響評価に基づく。

 担当官は、洪水を減らすと同時に環境保護を確保することは可能だ、EPAは、洪水を減らし、環境を保護し、納税者の負担を減らすようにプロジェクトを改善することを助けると言う。

 1941年に議会が承認したこのプロジェクトの中核は、洪水常襲地帯であるミシシッピ河支流ヤズー川デルタに広がるおよそ2万7000fに及ぶ湿地から、洪水時に毎分600万ガロン(2万3000㎥)を汲み出す排水機場を建設しようというものだ。主な目的は、農地を洪水から守ることにある。このヤズー排水プロジェクトは、建設に2億2000万ドル、毎年の運転に200万ドル以上の費用を要する。

 EPAは、ミシシッピ・デルタ地域の貴重な自然資源を護りながら、地域住民を洪水から護る手段の改善という目標も引き続き支持する、洪水防止のための代替プロジェクトを見つけるために他の連邦・州機関と協力することを約束すると言う。

 EPAは、クリーン・ウォーター・アクト(CWA)の下、自治体の水道、漁業地域、野生動物、レクレーション地域などへの容認できない影響がある場合には、水域の利用を禁止したり、制限したりすることができる。ただし、地元選出の二人の共和党上院議員は、EPAには議会の決定を覆す権限はないといきまいているそうである。

  EPA: EPA Decision Protects 67,000 Acres of Mississippi Wetlands,08.9.2 
  EPA Vetoes Large Flood-Control Plan,The Washington Post,9.3


 1961年に決まった諫早湾干拓事業の有様と照らし合わせると、日本の政治家や役人には、EPAの爪の垢でも煎じて飲ませたくなる。