環境損傷の最大要因は化石燃料と食料 農業の影響削減は肉食離れによってのみ UNEPパネル報告

農業情報研究所(WAPIC)

10.6.4

  国連環境計画(UNEP)の「持続可能な資源管理のための国際パネル」(略して「資源パネル」)が6月2日、化石燃料の使用と食料生産が最大の環境影響を引き起こす、経済成長と環境損傷を「デカップル」する(切り離す)ためには、エネルギー及び農業の二つの部門の劇的な改革、再設計が必要だとする報告書を発表した。

 Impacts Environnementaux de la Production et de la Consommation : Produits et Matières Prioritaires
 http://www.unep.fr/shared/publications/pdf/WEBx0160xPA-PriorityProductsAndMaterials_Summary_FR.pdf
 Press Release:Energy and Agriculture Top Resource Panel's Priority List for Sustainable 21st Century
 http://www.unep.org/Documents.Multilingual/Default.asp?DocumentID=628&ArticleID=6595&l=en&t=long

 報告によると、化石燃料と食料の生産と消費のパターンは、淡水供給を枯渇させつつあり、森林などの経済的に重要な生態系の喪失の引き金となっており、病気・死亡率を高め、汚染を持続不能なレベルにまで高めている。これら二つの部門の環境影響を経済成長からの切り離す必要があるが、これは、暖房・冷房システム、ちょっとした機械・器具類、移動の方法を含む家庭のエネルギー・食料利用パターンの劇的な改善から始めることができる。多分、論議を呼ぶことになろうが、環境への圧力を劇的に減らすためには、動物ベースの蛋白質から植物ベースの食品への食事のシフトが極めて重要だという。

 パネルは利用可能なすべての科学文献を精査、化石燃料の形でのエネルギーと農業、特に肉と乳製品のための家畜飼育の二つの分野の人々と地球の生命支援システムへの影響が群を抜いて大きいことを発見した。

 その研究によると、影響が大きいのは、第一に農業生産、特に世界の農作物の半分以上を消費する家畜生産。食料生産が消費する淡水は世界の総消費の70%、そのために利用される土地は世界の総土地利用の38%になる。食料生産は温室効果ガス総排出量の16%を排出、ヨーロッパの燐・窒素汚染の60%、有毒物汚染の30%は食料生産によるものだ。

 第二は、化石燃料ユーザー、特に発電施設とその他のエネルギー集約工業、住宅暖房、輸送。化石燃料の生産と消費は世界の環境劣化の主因となっている。オイルサンドなど代替化石燃料源からの抽出は、もっと大きな環境影響をもたらす可能性がある。

 第三は物質、特に利用が増大しつつあり、そのためのエネルギー需要が増えているプラスチック、鉄、鉄鋼、アルミニウムなどである。

 パネルは、効率の改善で農業の影響を減らすことは可能だが、2050年までの人口の50%の増加でこの効率改善は帳消しにされてしまう、従って、「影響の実質的削減は、食事の世界規模での動物製品離れによってのみ可能だ」と注意している。