米国:エタノール添加ガソリン法案採択、コーン・ベルトに恩恵

農業情報研究所(WAPIC)

03.6.7

 5月5日、米国議会上院がガソリンにエタノールを加えることをアラスカとハワイを除く全州で義務付ける法案を承認した。これは広大なエネルギー法案の一部をなすもので、エネルギー法案の中には原発増設、アラスカの北極圏野生動物保護区での石油掘削などにかかわるなお対立が厳しい法案が含まれ、最終的成立の確たる見通しはない。しかし、これも対立が激しかったエタノール問題が解決したことで、エネルギー法案採択へのはずみもつく。もし成立すれば、アラスカとハワイを除く諸州の全ドライバーは、2012年までにはエタノールを含むガソリンを使用することになる。

 法案は精油所のガソリンブレンド方法と大気浄化目的の達成方法を変えるものである。

 それはエタノール使用を倍増し、少なくとも年間50億ガロンの使用を要求する。エタノール使用の増加はガソリン不足を引き起こし、エタノール工場のない州では価格が高騰するという反対論があった。反対の急先鋒であったカリフォルニア選出上院議員・フェインスタイン(民主党)は、エタノール使用には州に最終的発言権を与えるという修正案を出しが、圧倒的多数で否決された。ニューヨーク州選出・シューマー議員は北東部などへの適用を免除する修正案を出したが、これも同様に否決された。

 エタノールは穀物やバイオマスで生産できるが、主として中西部のコーンから生産される。これら諸州の農業団体は、この法案を強く支持してきた。エタノール添加は8年かけて段階的に導入されるから、エタノールの供給不足の問題は起きないと主張していた。

 法案のもう一つの柱は、天然ガスから派生し、飲料水を汚染する恐れがあるメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)のガソリン添加の禁止である。MTBEは、オクタン価を向上させ、一酸化炭素、炭化水素の排出を減らすために、1970年代から多くの州で添加されるようになった。しかし、精油所は連邦の大気浄化要求を満たすためのガソリンブレンド方法で一層の柔軟性を与えれらた。

 採択された法案は農業者、石油企業、環境団体の妥協の産物であるが、エタノールに関しては、基本的には農業者の要求が通った。

 ベナマン農務長官は、この法案は、「アメリカ農民と農村住民のとって朗報だ。農産物需要を増加させることでコーンやその他の穀物の価格を引き上げ、農業者所得を増やし、農村加工ビジネスを創出する。これは、めぐって1万3千の農村雇用を創出または維持する。その23%が農業、21%が食品加工、56%が非食料品加工から生じる」と声明した(Agriculture Secretary Ann M. Veneman Regarding the Senate Passage of the Renewable Fuels Standard Amendment,June 5, 2003)。

 価格低迷に悩む国際商品作物のエネルギー利用は、米国だけでなく、南米などの大生産国でも、農業経済を支える重要な要素となってきた。 

 関連ニュース
 Etanol Terms Up Chances for Energy Bill,The Washington Post,6.6
 Senate Adds Rules to Energy Bill to Double Ethanol in Gasoline,The New York Times,6.6