中国 更新可能エネルギー促進法を採択 それでも原発依存は進むだろう

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.1

 中国日報紙によると、全人代常務委員会が28日、更新可能なエネルギーの生産・販売・利用を奨励する新たな法律を採択した(Legislature passes renewable energy bill,China Daily,3.1;http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-03/01/content_420450.htm)。通常は採択までに3回の審査を要するが、悪化するばかりの汚染問題、慢性化したエネルギー不足、増大する輸入エネルギー源依存への依存への懸念が高まるなか、通常の3回の審査を2回に短縮、採択を急いだ。

 この報道によると、中国では、遠隔地の村の3000万人が未だ電気を使えない。7億6800万の農村居住者の6割が調理や暖房に焚き火を利用しており、深刻な汚染・健康問題を引き起こす一方、植生を損なっている。一人当たりの石油備蓄量は世界平均の10%にすぎない。法律は、こうした問題の一刻も早い解決を目指す。

 来年発効するこの法律は、区域内の登録された更新可能なエネルギーの生産者が生産する電力の全量買上げを配電事業者に命じる。また、石油流通企業には、並行して液体バイオ燃料を販売するように奨励する。配電事業者は、更新可能なエネルギー源から生産される電力を政府が計算する指示価格で買い入れねばならない。これによって生じる追加コストは電力網全体で分け合う。法律は、さらに更新可能なエネルギー開発を促がすための国家基金や更新可能なエネルギー・プロジェクトのための低利融資・税優遇などの財政的刺激策も提供する。

 ただし、このような更新可能なエネルギーの開発も、急速な経済成長と巨大な人口(現在は13億1600万人で2050年には13億9200万人に達すると予想されるー最近発表された国連報告)がもたらす電力需要は、少なくとも近い将来は到底満たすことはできないだろう。

 2000年まで、石油換算で8億トン前後であった中国のエネルギー消費は年々増加、03年には12億トン近くに達した。厳しい電力不足に泣いた昨年の電力消費は前年よりも15%増加、2兆1700億kwに達した。中国電力業界は、今年の供給能力は7000万kw、16%増加する一方、需要は13%の増加にとどまるが、それでも2000kwから2500kwが不足すると予測する。しかも、タイトな石炭・石油・水供給、荒天と自然災害のために、この能力がフルに稼動するとはかぎらないと言う。さらに、現在の電力の大部分が石炭で賄われており、昨年の電力消費に占める更新可能なエネルギー源からの電力の消費の比率は3%にすぎなかった。法律は5年間で太陽・風力電力の利用を10%にまで増やすというが、この目標は楽観的にすぎる。

 来るべき15年間に27基を新設、現在総発電能力の1.7%を占める能力を4−5%にまで高めようと計画している原発への依存を強めるだろう。世界に先駆けて、安価で比較的安全な高温ガス炉(HTGR)を5年以内に稼動させるところまできたというニュースもある(China set to pioneer new 'safe' N-reactor,Financial Times,05.2.8,p.1China pioneers 'cheap, 'safe' nuclear reactors,Financial Times,05.2.8,p.2)。原発に関する世界のリーダー的存在となり、計画以上の原発依存が進むかもしれない。それが首尾よく電力不足解消と汚染削減・温暖化抑制につながるのか、世界の取り返しのつかない災厄につながるのか、誰も確かな予測はできない。ただ、地球環境の将来が中国のエネルギー政策に大きくかかっていることは確かであろう。