欧州委員会 エネルギー効率行動計画を提案 2020年までにEUのエネルギー消費20%削減

農業情報研究所(WAPIC)

06,10.21

  欧州委員会が10月19日、2020年までにヨーロッパのエネルギー消費を20%削減するエネルギー効率行動計画(EEAP、Energy Efficiency Action Plan)を発表した。それは、電気製品のエネルギー基準の強化、建築物の省Eエネ促進、車の燃費向上など75の措置を含む。これにより、2020年までにエネルギー消費のコストは年々1000億€減り、年間二酸化炭素排出量も7億8000万トン減ることになる 。欧州委員会は、エネルギー効率改善は、他の手段が限られるなか、エネルギーの外国依存と環境損傷を減らすための「最も容易で、最も迅速で、最も効率的な方法」だと言う。

 Saving 20% by 2020: European Commission unveils its Action Plan on Energy Efficiency,10.19
SAVING 20% BY 2020,10.19
  SAVING 20% BY 2020,10.19

 何故行動計画なのか

 欧州委員会は、この行動計画の提案理由を次のように説明する。

 環境を保護し、子供たちにのための安定的エネルギー供給を確保しようとすれば、電球やボイラーや冷蔵庫の改良、家屋の断熱、汚染の少ない車の購入、公共輸送の利用など、なすべきことがある。ところが、エネルギー価格高騰、環境やエネルギー安全保障への懸念の高まりにもかかわらず、ヨーロッパは、そのエネルギーの20%もの浪費を続けている。2020年までに、そのコストは1000億€を上回る。そのうえ、貨幣価値では表せないさらなる環境損傷を引き起こすだろう。エネルギー効率の欠如は個人レベルでもあらゆる人々に影響を与える。旧式のエネルギー消費設備の利用やエネルギー節約のための単純な行為を怠ることによって、エネルギー支出を膨れ上がらせ、無意識的に生活費を引き上げている。

 最も心配される趨勢は輸送・電気需要の増加だ。この趨勢を覆すための何の行動も取られなければ、エネルギー消費は今後15年間で10%は増加する。輸送だけでEUの一次エネルギー消費の20%を占め、輸送市場の98%は石油に依存している。輸送ーその98%が道路輸送ーは二酸化炭素の26%を排出している。

 移動、特に道路による移動は、過去30年に大きく増加した。人々が車で移動した距離は、30年前には一日あたり平均17kmだったが、現在では35kmになった。道路輸送は渋滞と汚染 の”同義語”となり、ヨーロッパのGDPに年に0.5%の負担をかけている。

 電気需要も近年大きく増加している。しかし、発電に要する一次エネルギーの3分の2が、生産・輸送・流通過程で失われている。

 ビルは、EUのエネルギーの40%を消費している。ここでは、非効率的な冷暖房と照明のために、大量のエネルギーが浪費され続けている。

 エアコン利用の増加、大量の燃料を使うオフロード車の大流行、電気機器のスタンバイ・モードの導入などの新しい現象もエネルギー消費の増加に寄与しており、電気消費の7%を占めるに至っている。

 しかし、市場だけでは、必要なエネルギーを節約することはできない。電気・石油価格は、社会にとっての真のエネルギーのコストを反映しないし、消費者の利用可能な節約手段の採用を促進することもない。最近のEU世論調査によると、ヨーロッパ人の26%は、燃料価格が上がったとしても、車を使う回数は減らさない、31%は少しばかり減らすだけと答えている。実際、エネルギー源が希少になりつつあるそのときに、EUのエネルギー消費は増加を続けている。その上、エネルギー供給サイドの操作の余地は限られている。更新可能なエネルギーも、石油やガスに置き換わるほどに十分な増加はしてこなかった。エネルギー節約は、エネルギーの外部依存の問題に答え、環境損傷を減らすための最も容易で、最も迅速で、最も効率的な方法である。

 EEAPは、エネルギー消費を2020年までに20%減らすという完全に達成可能な目標を設定した。それは産業・消費者・環境に好影響をもたらす。これらの努力のノックオン効果は経済成長と雇用創出の目標の実現にも貢献する。それは、EUの競争力、市民の生活水準を改善し、新たなエネルギー効率的技術の輸出を増加させる。個人レベルでは、エネルギー消費パターンの僅かな変化が、金の節約、環境改善、ヨーロッパの共通目標への応分の寄与につながる。

 行動計画の柱

 それは次の10本の主軸で構成されている。

 ・電気製品・設備・その他エネルギー利用設備の表示とパフォーマンス要件の改善。とりわけスタンバイによる損失の削減に焦点を当てる。(改善された基準は、EU域内製品だけではなく、輸入品にも適用される世界基準とすることを目指す )

 ・ビルのパフォーマンス要件の強化。

 ・発電と配電の一層の効率化。

 ・車の燃費の向上。必要ならば、2012年までに1kmあたり二酸化炭素排出量を120gにする目標を達成するための立法も提案。

 ・企業のためのエネルギー効率投資への適切な融資手段。

 ・新規加盟国におけるエネルギー効率の飛躍的改善。構造・結束基金(*)を通しての国・地方レベルでのエネルギー効率投資のための民間資金供給へのてこ入れ。

 *EU域内の地域格差・社会的格是正、域内低開発地域の交通・環境インフラ整備のためのEU予算。共通農業政策(CAP)次ぐ多額の予算額を持つ。

 ・エネルギー税の標的を絞った整合的な利用。

 ・エネルギー効率にかかわる啓発の強化。産業や発電所におけるエネルギー管理者の教育・訓練、初等・中等・職業学校での教育援助。

 ・都市環境、特に輸送部門において最善の慣行を強化・適用し、エネルギー効率を改善することを目指す大都市と最先進都市の恒久的ネットワークの設立。

 ・世界規模でのエネルギー効率改善の促進。欧州委員会は、主要貿易相手国及び国際機関との枠組協定を目指す行動を2007年に開始する。

 欧州委員会は、これらの目標が達成されるためには、国・地域・地方レベルの政治的意思と約束が必要だと言う。

 反響

 BBC Newsによると、電気製品産業代表者は、EEAPが製品のエネルギー効率を改善する製造者への減税措置などを提供する考えを含むこを歓迎している。ただし、エネルギー節約目標を達成するための 手段に弱点があるように見えるとし、提案の執行に関して懸念を表明している。市場には多くのフリーライダーがおり、近年40%ものエネルギー節約に貢献してきたヨーロッパのこの部門が不利益を蒙る恐れ がある。正直者が憂き目を見ることになると恐れているわけだ。

 環境団体も、エネルギー浪費を減らすという委員会の目標は歓迎するが、教育や自主的措置だけでは目標は達成できない、この目標はEUのすべての政策分野の核心に据えられねばならないと言う。

 EU sets 'ambitious' energy goals,BBC,10.19

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