エタノール混合燃料車 ガソリン車よりも健康に有害の可能性ー米国の研究

農業情報研究所(WAPIC)

07.4.19

  風力エネルギーや気候変動・大気汚染など大気にかかわる問題の専門家であるスタンフォード大学のマーク・ジェイコブスン准教授が、車の燃料としての利用が世界中で増加しているエタノールは、一般的な受け止め方に反し、ガソリン以上に健康に有害である恐れがあるという研究を発表した。

 Mark Z. Jacobson,Effects of Ethanol (E85) versus Gasoline Vehicles on Cancer and Mortality in the United States,Environmental Science & Technology,Web Release Date: April 18, 2007:Abstract

 ガソリン車による大気汚染は大量の呼吸器病・喘息(ときには癌)患者を生み出し、米国におけるこれらによる死者は毎年1万人にのぼるという。その最大の元凶が、(地表)オゾンを作りだす二酸化窒素やアセトアルデヒドなどの有機浮遊粒子状物質だ。オゾンは多くの健康リスクをもたらす(光化学)スモッグの中心的構成要素をなす。

 ところが、エタノールは燃えないままで車から大量に大気中に逃げ出し、これが太陽光で分解されてアセトアルデヒドを形成、オゾンのレベルを大きく引き上げる。エタノール車が排出するベンゼンやブタジエンのような発癌物質はガソリン車よりも少ないが、アセトアルデヒドの排出量は20倍にもなる。

 彼の計算では、将来(2020年)、すべての車がガソリン15%・エタノール85%のE85燃料で走るとすると、すべてが100%ガソリン車である場合よりも、オゾンに関連した死・入院・喘息をロサンゼルスで9%、全米で4%増やす恐れがある。癌のリスクはほとんど変わらないが、オゾンの影響のために全体としての健康リスクはエタノール利用の増加で増える。

 ただし、計算のために想定した将来の両方の車の排出規制に関する不確実性のために、確信をもって言えるのは、E85が将来のガソリン車以上に大気質を改善することはありそうもないということだけだと言う。

 関連ニュース
 Ethanol cars may not be healthier,BBC News,4.18
  http://news.bbc.co.uk/1/low/health/6563255.stm
 Warning: Biofuel may harm your health,NewScientist.com,4.18
 http://environment.newscientist.com/article/dn11628-warning-biofuel-may-harm-your-health.html