フィリピン バイオジーゼル1%混合がスタート 森林・食料への脅威も

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.11

 5月6日、フィリピンでジーゼル自動車燃料へのバイオジーゼル(ココナッツ・メチルエステル=CME)の1%混合が始まった。2006年バイオ燃料法の発効に伴うもので、この日から3ヵ月以内に、すべてのジーゼル車が使用する燃料がバイオジーゼルを最低1%ブレンドしたものに切り替えられねばならない。2年後には2%ブレンドが義務となる。

 これにより、「呼吸器病の増加と地球温暖化の原因とされる有害な自動車排気が減ると期待される。研究は、CME1%混合だけでも・・・二酸化炭素排出が44%から77%減ることを明らかにした」という。

 Only coco-diesel blend sold as Biofuels law takes effect,INQ.net,5.5
 http://newsinfo.inquirer.net/breakingnews/nation/view_article.php?article_id=64278

 だが、バイオ燃料法は、エネルギー業界やバイオエタノール混合ガソリンで走る車の売り込みを狙う米国フォード、原料市場拡大の利益に与ろうとする農業界などの激しいロビー活動を通じて実現したものだ。必ずしも人間の健康や環境への配慮だけがバイオ燃料法制定の動機ではなく、食糧安全保障や環境を脅かという批判も免れるものではなかった。

 SciDev.netの報告によると、1%混合の義務を果たすためには7000億リットルのバイオジーゼルが必要になる。この必要を満たすために、農業省とココナッツ機関は74万エーカー(30万f)の土地開拓を計画している。フィリピンの350万と推定されるココナッツ農民の一人であるアルマンド・ガルベスは、農民がナイオ燃料需要を満たそうとして大量の森林破壊に突進するかもしれないと恐れている。

 彼によると、「農民はいまや、バイオジーゼルのためのココナッツを増産しろとの政府の要求のためにお互いに競い合っている」。

 また、「ココナッツ農民がますます増えるだろう。ある者は地方住民のために食料作物を生産するのをやめるかもしれず、基本的商品と基礎食料品の価格が跳ね上がる恐れがある。それは破滅的だ」と、地方住民が将来の食料不足に悩むことも恐れる。

 The Philippines opts for biodiesel,SciDev.net,5.10
 http://www.scidev.net/content/news/eng/the-philippines-opts-for-biodiesel.cfm

 バイオジーゼル・ブームは、健康や環境に優しいとされる食品や商品(例えば、ライオン、植物原料の使用拡大 日経 5.10)のブームととも、原料となるオイルパーム(油椰子)プランテーションの野放図な拡大を通して、既にマレーシア・インドネシアの熱帯雨林を破壊しつくそうとしている。フィリピンもその後を追い始めたということだろうか。国連の警告(国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告,07.5.10)は、ここでもどこ吹く風だ。