コロンビア バイオ燃料が農民を追いたて 非正規軍の土地強奪で最悪の難民危機

農業情報研究所(WAPIC)

07.6.8

  米国の除草剤空中散布による撲滅作戦にもかかわらず、作物を枯らすばかりでコカ生産が一向に減らないコロンビアで、今度は、環境に優しいとして生産が促進されているバイオ燃料のためのパームオイル(椰子油)プランテーションの開発に道を開くべく、武装グループが農民を土地から追い立てている。英国・ガーディアン紙が伝えるところによると次のとおりだ。

 Massacres and paramilitary land seizures behind the biofuel revolution,The Guardian,6.5
  http://environment.guardian.co.uk/energy/story/0,,2095349,00.html

 活動家や農民によると、”グリーン”な燃料に対する需要の急増が右派非正規軍による広大な土地の収奪を促進している。数千の家族が殺戮や脅迫から逃げ出した。そのために、コロンビアの難民人口は300万人に膨れ上がり、ダルフール、コンゴに次ぐ世界最悪の難民危機がまた一つ加わった。

 全国パームオイル生産者連盟(Fedepalma)のカストロ書記長は、いくつかの企業が共同して土地所有権を主張する偽造権利書を作っている、”秘密主義的商慣行と脅迫の利用によるパーム開発の結果として、人々が土地から立ち退きを強要され、企業がその土地を自分のものと主張している」と言う。そして、このような言い分は、クリスチャン・エイドやコロンビア全国先住民団体のようなグループによっても支持されている。

 これは、経済・環境に関する成功物語と考えられてきたものの暗黒の裏面を暴くものだ。油椰子の実は調理のための植物油を生産し、8万人を雇用し、バイオ燃料に転換されるものが増えている。ウリベ大統領はガーディアン紙に対し、”コロンビアの4年前の油椰子は17万2000fしかなかったが、今年は40万f近くに達すると見込まれる。4年前、コロンビアはバイオ燃料をまったく生産していなかった。現在では、わが政府のお陰で、1日に120万リットルを生産する。新施設への投資で生産はさらに増加を続けるだろう」と語った。

 しかし、40年に及ぶ農村地帯での反乱で作り出された無法状態が、右派非正規軍だけでなく、恐らくは左派反乱軍もこのバイオ燃料ブームに乗ることを可能にした。コカの場合と異なり、油椰子は合法作物だから、撲滅作戦から逃れられる。

 銃口を突きつけられて退去を強要されてきた農民たちは、多くの場合、彼らのバナナ園と放牧場が油椰子プランテーションに変えられたと言う。ルイ・フェルナンデス(実名ではない)は9年前、義父と何人かの隣人が撃ち殺されたあと、彼の170fの土地から逃げ出した。彼とその他の生き残った者が最近そこに戻ると、土地がパームオイル生産会社の手に渡っていることが分かった。会社は土地権利書を持っていると言うが、彼は20年前からの権利書を持っている。彼は、証拠はないが、会社と非正規軍が結託していると信じて疑わない。

 生産者協会のカストロ博士によると、政府の調査は、一部地域では80%の油椰子園の土地所有が非合法であることを明らかにしている。国連難民高等弁務官事務所によると、過去4年、年平均20万の新たな難民が登録されたきた。その大部分は、カリブ海沿岸の油椰子栽培地域から来た人々という。

 最近の国連バイオ燃料影響評価報告は、それが貧困軽減、エネルギーへのアクセス、農村開発、農村インフラに関連した多くの便益をもたらし得るとしても、「脅かされた土地を保護し、社会的に受忍できる土地利用を確保し、バイオエネルギー開発を全体として持続可能な方向に操縦するための新たな政策が執行されなければ、環境と社会が受ける損害が便益を上回る場合もある」と警告した(国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告,07.5.10)。しかし、現状は、ほとんどすべての国がこのような「新たな政策」を欠いたままにバイオ燃料増産に突っ走っている。このままでは、バイオ燃料が、まさにすべてー環境も、農地も、食料生産小農民もーを焼き尽くしてしまうことにならないだろうか。