フィリピン ヤトロファ原料のバイオディーゼル大増産へ

農業情報研究所(WAPIC)

07.8.29

  フィリピン・アロヨ政府がバイオディーゼルの大増産計画に乗り出した。全国で70万fの土地を原料植物であるヤトロファの栽培に割り当てる。その目的は高価な輸入原油への依存を減らし、農民所得を増やすことにあるが、農村住民を調理用薪を得るための樹木伐採者(森林破壊者)から植林者に変える効果も期待されるという。

 PGMA determined to pursue use of renewable energy,PNA,8.28
 PGMA calls on Filipinos to 'grow oil on soil',PNA,8.28
 Land Bank allocates P10B for govt's Jathropa program,PNA,8.28

 このために、政府はヤトロファ生産に必要なローンの支援と生産物の販売促進で農民を助ける。環境・自然資源省にはヤトロファ植樹を含む再植林計画のために年22億ペソ(約54億円)の予算を配分、更新可能なエネルギー促進のためにエネルギー省にも1億ペソ、フィリピン国有石油(PNOC)にも10億ペソを配分する。

 フィリピン土地銀行は、政府ヤトロファ栽培計画に参加するための農民計画策定に50億ペソから100億ペソの財政支援を行う。ヤトロファ生産に参加する協同組合加入農民は、2年間にわたり1fあたり4万ペソのローンを受けることができる。生産物は保証価格で買い入れる。

 それで石油依存がどれほど減らせるのと計算しているのかは分からない。ブラジルでも、2030年にバイオ燃料が輸送用燃料に占める比率は最大に見積もって30%程度(世界と米国では7%程度)というから(国際エネルギー機関の”2006年世界エネルギー見通し”)、多分、経済的に意味があるほどは減らせないだろう。

 それでも、環境改善に役立てば結構なことではある。ただ、それはヤトロファがどのような土地に栽培されるかに依存する。天然林や自然植生にとって代わるのならば、環境上のメリットは削がれる。

 大統領は、液化石油ガス(LPG)が非常に高いために、フィリピンには調理のための燃料を薪に頼る家庭がなお600万を数え、それが森林破壊に結びついている、従って、「ヤトロファの普及は燃料に木材を使う樹木伐採者から森林を護る」と言う。

 しかし、バイオディーゼルは自動車燃料だ。調理用燃料はどうする?彼女は、ヤトロファ種子から抽出されたバイオディーゼルをLPGに代わる”液化加工ヤトロファ(LPJ)”に転換する方法を研究するようにエネルギー省に命じたという。しかし、石油ディーゼルより高価なバイオディーゼルをどうやってLPGより安いLPJに転換するというのだろうか。

 600万家庭は相変わらず伐採を続けるのだろうか。それとも薪も調達できなくなって、高価なLPGやLPJの購入を強制されることになるのだろうか。