バイオディーゼルで温暖化ガス減少 パームオイル原料では逆効果 豪研究機関

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.30

 オーストラリアの国立科学研究機関・CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機)が11月27日、バイオディーゼル(BD)利用の温室効果ガス(GHG)排出量と大気汚染への影響に関する研究報告を発表した。それは、BDの利用がGHGや粒子状物質の排出を大きく減らし、地球温暖化を抑制するととももに、大気汚染から来る人間の健康リスクも減らす可能性があると認める。

 しかし、BDのライフサイクル全体を通してのGHG排出削減効果は、その原料によって大きく異なる。特に熱帯雨林の開拓や泥炭地排水により造成されたオイルパーム(油椰子)プランテーション由来のパームオイルを原料とする場合には、石油由来ディーゼルを利用する場合に比べて、GHG排出量はかえって大きく増えてしまう。既存のプランテーション、すなわち、現在の炭素収支計算方法においては開墾や土壌撹乱に関連した排出がGHG排出としてカウントされない1990年より前に造成されたプランテーションからのパームオイルを原料とする場合にのみ、GHG削減効果を認めることができるという。

 Tom Beer, Tim Grant and Peter K Campbell;The greenhouse and air quality emissions of biodiesel blends in Australia,CSIRO,2007.8
 http://www.csiro.au/files/files/phim.pdf

 この研究は、カノーラ(菜種)、既存プランテーションからのパームオイル、熱帯雨林からのパームオイル、泥炭排水林からのパームオイル、タロー(動物副産物としての獣脂)、廃調理油を原料とするBDが100%のディーゼル燃料(BD100)、BDを2%ブレンドしたディーゼル燃料(BD2)を利用する場合のGHG等のライフサイクル排出量を、ディーゼル燃料を利用する場合のライフサイクル排出量と比較した。

 カノーラ油の上流過程(つまりカノーラの栽培と収穫)におけるGHG排出量は、ディーゼル精製過程からのGHG排出量のおよそ3.5倍になる。これは、タローでも1.5倍ほどになる。既存プラーテーションからのパームオイルでは1.25倍とさらに少ない。しかし、オイルパーム栽培のために熱帯雨林、あるいは排水泥炭森林が開拓された場合には、これは50倍から136倍にもなる。

 廃調理油の場合だけは、上流での排出は僅かながらディーゼルより減る。

 ディーゼルを使う場合と比較してのBD100を使う場合のライフサイクル全体の1kmあたりGNG排出量は、CO2相当量に換算して、カノーラで422g(49%)、タローで646g(76%)、廃調理油で746g(87%)、既存プラーテーションのパームオイルで680g(80%)少ない。しかし、熱帯雨林、排水泥炭地森林からのパームオイルでは8倍から21倍になる。

 BD2の場合には、排出量の減り方はずっと少なくなるか、増加さえする。廃調理油、タロー、カノーラ、木既存プランテーンからのパームオイル、それぞれ14−15g、12−13g、7−8g、12−13g減るにすぎない。熱帯雨林、排水泥炭地森林からのパームオイルでは、142gから338g増えてしまう。

 報告は、熱帯雨林破壊や泥炭地排水につながるアジアからの輸入パームオイルに頼るのをやめ、オーストラリアでオイルパームを栽培するとすれば、機械化が大きく進んでいるから、GHG排出量はもっと増えるだろうと強調している。