次世代バイオ燃料開発よりも、バイオ燃料発展を遅らせよー国際食料政策研究所

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.5

  国際食料政策研究所(IFPRI)が12月4日、世界の食料をめぐる状況は、新たな推進力により急速に書き換えられつつあるとする世界食料情勢に関する隔年報告書を発表した。

 http://www.ifpri.org/media/20071204agm.asp

 それによると、多くの途上国における経済成長、グローバリゼーション・都市化(それに伴う食事嗜好の変化)、エネルギー価格の高騰によって世界の食料・飼料・燃料用穀物需要が急増する一方、主要生産国における作付面積の減少や気象災害の頻発で生産が需要に追いつかない事態が続いている。その上に、巨大アグリビジネス、とりわけ巨大食料小売企業が世界食料を支配するようになった。そのために生じた食料の利用可能性の変化、商品価格高騰、新たな生産者−消費者の関係が、貧者や食料不安を抱える者の生計に重大な影響をもたらしている。そして、これらの価格上昇はすぐに収まることもないだろう。

 こうしたことは、最近、方々で言われてきたことだが、この報告に盛られたとりわけ新しい情報は、バイオ燃料が世界食料価格に与える影響の新評価である。これに関して、今年7月に発表されたOECD-FAO Agricultural Outlook 2007-2016は、「再生可能燃料政策の変化や、バイオ燃料産業のさらなる発展に大きくかかっている」としているが(22頁)、IFPRIは、その”農産商品尾及び貿易の政策分析国際モデル”(IMPACT)を使い、二つのシナリオの下での影響評価を実現した。

 それによると、多くの国の現在のバイオ燃料投資計画を前提とし、また計画は持たないが高い潜在能力を持つ国における生産拡大を仮定した”シナリオ1”では、トウモロコシと油料種子の国際価格は、それぞれ26%、18%上昇する。シナリオ1のレベルの倍を想定した”シナリオ2”の下では、それぞれ72%、44%の上昇となる。そして、どちらの場合の価格上昇も、食料の利用可能性と食料へのアクセスの純減、すべての地域におけるカロリー消費の減少につながる。

 この結果を受け、IFPRIのJoachim von Braun所長は、先進国はバイオ燃料の影響と気候変動がもたらす脅威の研究に一層投資すべきだと勧告する。廃棄物ー藁、茎などの非食用部分ーからバイオ燃料を生産する次世代技術の創出も期待できないわけではないが、このようなバイオ燃料が食料以上の競争力を獲得すれば、一層の土地、水、資本がバイオ燃料生産に投じられて、食料と燃料のトレードオフ関係がさらに強まる、最優先すべきはバイオ燃料拡大を遅らせることだと言う。

 さらに、バイオ燃料作物を栽培する農家のための補助金を獲得するために作られてきた一部政治的圧力団体は、極言すれば”anti-poor”だ、「これら補助金は、貧しい人々の消費支出の大きな部分を占め、上にみたように価格上昇でますます高価になっている基礎食料への課税として作用するからだ」と言う。

  関連ニュース
 Rising food prices threaten world's poor people,Environmental News Network,12.4
 http://www.enn.com/agriculture/article/26442