カーギル 原料トウモロコシ価格高騰でエタノール工場建設を中断

農業情報研究所(WAPIC)

08.2.28

 米国穀物メジャー・カーギルが、市場条件が悪すぎるからと、カンザス州・トピカの近郊での2億ドルのエタノール工場建設を中断する。市場条件が好転しないかぎり、再開はないという。

 Cargill suspends plans for Kansas ethanol plant,USA Today,2.26
 http://www.usatoday.com/money/industries/energy/2008-02-26-cargill-ethanol_N.htm

 会社のスポークスマンは、この決定の詳細な理由は語らない。しかし、カンザス州立大学の上級農業エコノミストであるジェイ・オニール氏は、穀物価格高騰でエタノール工場が利益を出すのが難しくなっていると言う。原料となるトウモロコシの価格はブッシェル当たり5ドルを超える記録的高さになり、他方、工場建設費は5年前の倍になった。トウモロコシ価格が高止まりすると、会社は損失も出す恐れがある。

 カーギルの子会社、エメラルド・リニューアブル・エネルギーは、1年前、トピカ北西の300エーカーの土地に工場を建設する計画を発表した。工場は年に1億ガロンのエタノールを生産するはずだった。エメラルドには、カンザスの外に3工場を建設する予定もある。

 スポークスマンは、「困難な市場条件は産業全体に広がっている。我々はいくつかの厳しい決定をしつつある」と言う。

 なお、この工場の建設は、汚染の発生、交通量増加、地下水枯渇、不動産価格低下を恐れる住民の反対も生み出した。反対住民のリーダーの一人は、”これは大ニュース”、”絶対にワンダフル”だが、カーギルが”中断”としか言っていないから、警戒は緩めないと言う。 


 カーギルは、穀物価格上昇の本業への影響を考慮、米国内でのエタノール生産拡大には慎重な態度を取ってきた。ライバル穀物メジャー・ADMの国内生産能力が現在10億7,000万ガロン/年に達しているのに対し、1億2,000万ガロン/年の生産能力しかもたない。穀物価格高騰で、エタノール事業にはますます慎重になりそうだ。ADMも、穀物価格上昇で本業では大儲けだが、エタノール事業の利益は細る一方だ。その上に住民の反対運動とあっては、さしもの米国エタノール産業も、これまでのような大躍進がいつまで続くか分からなくなってきた。