ブラジル バイオディーゼル5%混合義務化を前倒し 森林破壊加速を恐れる専門家

農業情報研究所(WAPIC)

08.4.4

  ブラジル政府が石油ディーゼル燃料へのバイオディーゼルの義務的混合の最終期限を前倒しすることを決定した。専門家は、これが大豆や低収量の油料作物の生産をあおり、最大限の環境損傷を引き起こすと恐れている。

 BRAZIL: Clean Gasoline Fuels Soybean Production,IPS,4.3
 http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=41849

 ブラジルでは、今年1月から輸送用軽油燃料への2%のバイオ燃料混合が義務化された。7月からは3%混合が義務化される。そして、2013年には、この混合率を5%に引き上げるのが現在の計画だ。しかし、ロバゥン鉱業エネルギー大臣は、この期限を2010年に前倒しすると語った。

 バイオ燃料とその原料や設備の生産者・研究者の団体であるブラジルバイオディーゼル連盟(Ubrabio)のセリジオ・ベルトロン会長は、現状では2009年の早い時期に5%混合燃料が利用されることになるだろうと言う。”名目的”には既に、5%混合のために必要になる年に28億リットル(280万kL)のバイオ燃料を生産する能力があるということだ[2007年のバイオディーゼル生産量は08年からの2%混合のために必要になる量の半分ほどの40万kLでしかない]。

 彼は、これにより大豆生産が今後多年にわたり恩恵を受けることになる、量的に十分に利用でき、産業組織や物流が需要に見合った供給ができるように整備されているのはこの作物だけだからだ、と言う。

 しかし、サンパウロ大学の国立バイオマスセンター (CENBIO) の研究者であるオルランド・クリスティアーノ は、大豆生産がますます刺激されるのを恐れている。

 氏によると、大豆農業は、[政府の目標の一つをなす社会的統合」を促進せず、その拡張はアマゾン地域の森林破壊を加速する”可能性がある”。他の油含有植物、特にパームを奨励する方がいいが、期限が前倒しされたことで大豆に依存するほかなくなる。大豆ならば生産が需要増加に速やかに対応できるからだ。

 アフリカのパームは多年にわたり研究されてきて、アマゾン東部のパラ州で生産性が高く、大豆よりもはるかに優れていることが立証されている。これは、森林が破壊され、劣化した地域の回復にも貢献するが、その能力は無視され続けている。アマゾンの密林の再植林にアフリカ・パームを利用することには、再植林はもともとの樹種を80%使わねばならないという法律の障害もある。
 
 さらに、ブラジルには数百の原生パームがあり、その一部は非常に多量の油を産出するが、”商業的で永続的に”生産されておらず、そうするためには長い時間がかかる。ヤトロファも同様。常に生産される綿実、ヒマワリ、ピーナツなどは、巨大なエネルギー市場に意味ある貢献するには生産規模が小さすぎる。
北東部半乾燥地域の小農民のために選抜されたヒマシは燃料に利用するには粘性が強すぎ、薬品・化粧品産業からの需要が大きい。

 しかし、ベルトロン会長は、原料が多様なことは望ましいが、バイオ燃料計画は待てない、大豆が生産性やエネルギー効率で最も優れているとは誰も認めないとしても、大豆は多年にわたりバイオディーゼルの支配的原料となるだろうと言う。

 期限の前倒しは、新たな代替品も含むバイオ燃料生産を全面的に刺激する、だから,Ubrabioは、バス、トラックなど一定の車での10%から20%のバイオ燃料混合も支持する。現在の家族農民に対する原料生産奨励措置や減税措置だけは不十分から、これを拡張し、別の措置も作れと言う。しかし、社会・環境便益は、促進されねばならないと言うだけだ。


 バイオディーゼルの大量利用は輸入に頼らざるを得ない日本、輸入燃料の”持続可能性”の厳格な審査がますます不可欠になりそうだ。