バイオ燃料大規模生産は途上国農村婦人の疎外を助長 FAOの新研究

農業情報研究所(WAPIC)

08.4.23

  国連食糧農業機関(FAO)が4月21日、バイオエタノール、バイオディーゼルなど液体バイオ燃料の途上国における大規模生産は婦人を一層疎外することなる恐れがあるという新たな研究を発表した。

 これらバイオ燃料の大規模生産は、土地、水、化学肥料、農薬などの資源や生産資材の大量の使用を必要とする。小規模農民、とくに婦人は、もともと制限されてきたこれら資源や資材の入手や利用が、ますます制限されることになる。これが農村婦人の一層の疎外につながり、それが農村家庭の生計を脅かすことにもなるという。

 近頃、原料として非食料植物を使えば食料との競合は回避できるから、このようなバイオ燃料は持続可能だという主張が大威張りでまかり通っている。しかし、この研究は、このような主張がいかに浅はかなものであるか、改めて思い知らせる。

  Gender and Equity Issues in Liquid Biofuels Production – Minimizing the Risks to Maximize the Opportunities,FAO,Rome,2008.
  http://www.fao.org/docrep/010/ai503e/ai503e00.htm

 この研究によると、バイオ燃料の大規模生産が途上国農村婦人の疎外を助長する主な筋道は次のようなものだ。

 第一に、バイオ燃料に対する世界の需要増大は土地に対する需要を増大させ、貧しい農村民に生計の手段を提供し、とくに婦人が耕している”限界”地への圧力を強めるだろう。これらの土地のバイオ燃料生産用プランテーションへの転換は、「婦人の農業活動のもっと限界的な土地への部分的または全面的な移動を引き起こす恐れがある」。これは婦人の食料供給能力を損なう結果にもつながる。

 第二に、バイオ燃料用大規模プランテーションに関連した自然資源の消耗や退化が農民、とくに婦人農民の労働や健康への追加負担をもたらす恐れがある。バイオ燃料生産が、直接的に間接的にか、水や薪の供給と競合すると、家庭によるこれら資源の利用可能性が減ることになろう。水や薪の採集は、大部分の途上国で婦人の役目となっているから、採集のために婦人が歩き回る距離が増え、他の所得源から稼ぐために利用できる時間も減る。

 第三に、地方の様々な作物がモノカルチャーのエネルギー作物プランテーションに取って代わられると、農業生物多様性や、主に婦人がこなす地方作物の管理、選別、貯蔵などの活動かかわる小規模農民の広範囲にわたる知識や伝統的技能が脅かされる恐れがある。

 研究は、食料安全保障と農村コミュニティーの活力の持続にとって決定的に重要な小規模農民の伝統的農業活動、技能、専門的知識を保護するために、エネルギー作物栽培を既存の農業・食料システムに組み込む、環境的に持続可能で、貧困軽減を目指したバイオ燃料開発戦略を要請する。

 婦人・女性が率いる家庭が、バイオ燃料の持続可能な生産に従事し、またこの生産の利益に与かる男性と同じ機会を持つように保証する措置が取られねばならない。これは、婦人が率いる家庭の数が、南部アフリカでは40%、カリブ地域では35%に達するほどに増加しているから、一層重要になるという。

 バイオ燃料生産工場の建設は農村地域に雇用を生み出すが、大部分が低熟練農業労働者の季節的雇用、あるいは臨時雇用である。増加しているこのような労働者の多く(ラテンアメリカ・カリブで全体の40%)は婦人で、既存の不平等のために賃金、労働条件、諸手当、安全・健康リスクに対する訓練や暴露で男性と差別される傾向が強いという。