タイ バイオ燃料利用で石油消費が大きく減少 反面、高まる森林破壊の懸念

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.12

  石油価格高騰の影響を避けるために、タイのバイオ燃料消費が急増している。

 今年4月のガソホール(エタノール混合ガソリン)の1日当たり平均消費量は、去年4月の消費量の倍の800万リットルになった。うち、エタノール10%を含むガソホール91が196万リットル、残りがプレミアム・ガソホール95、エタノール20%を含むより新しいE20の販売量も4万7000リットルになった。

 バイオディーゼル5%を混合したディーゼル燃料B5の1日当たり平均消費量は、107万リットルから843万へ、1年で700%近く増加した。B2消費量も若干増加、1日当たり4516万リットルとなった。

 エネルギー政策計画局(EPPO)によると、このような趨勢が続くと、石油価格を30バーツ/リットルとして、国全体の年間エネルギー支出は、420億バーツ(1350億円)減ることになる。

 Alternative fuel use surging,Bangkok Post,5.10
  http://www.bangkokpost.com/100508_Business/10May2008_biz27.php

  反面、このようなバイオ燃料消費の増加は、バイオ燃料作物栽培熱を燃え立たせ、森林破壊の問題が一層深刻になるという心配も掻き立てている。

 自然資源環境省のサクシット事務次官は、明確なバイオ燃料作物栽培方針がなければ、一部地域の肥沃な森林の刈り払いにつながるのは避けれらないと言う。

 彼は、関係機関が森林侵略を防止するための具体的計画を策定するように要請した。「油椰子(オイルパーム)のような燃料作物は一定のタイプの土地では栽培できない。各地域の適性を慎重に研究する必要がある。我々は、ゴム農園のための森林喪失を既に経験してきた」と言う。

 彼によると、省は1500万ライ(240万f)の退化森林再建計画を持ち、一部は燃料作物に当てられようが、その面積は限られている。国立公園・野生動物植物保全局長は、残った森林を保全するために、燃料作物ゾーニングは緊急に必要だ、「燃料作物拡大に対する特別な規制を望む。この問題に関する明確な指針なしでは、森林保護は難しい」と言う。

 2年前、ゴムの価格の記録的高騰で、同様なゴム農園ブームが起きた。大量の森林がゴム農園のために切り払われた。国の全森林面積:1億3764万ライ(2200万f)のうち、4400万ライ(700万f)が侵略を受けたと推定される。省は、軍と森林保護のための協力協定を結んだ。兵士がリスクのある森林を助け、森林レンジャーの訓練も引き受けるという。

 また、国家経済社会諮問委員会は、燃料作物拡大がいくつかの生態的に重要な地域の損傷を引き起こすと心配している。たとえば、南部・ナコンシータマラートのパックパナンでは5万ライ(8000f)の湿地がオイルパーム農園になった。東部、東北部でも類似の問題が起きている。

 「我々は、巨大な量の水を消費する植物が、もし間違った場所に植えられると、生態系に深刻な問題を生むを恐れる。政府による明確なオイルパーム農園政策が必要だ」という。

 Planting crops for fuel raisesconcern,Bangkok Post,5.3
 http://www.bangkokpost.com/030508_News/03May2008_news06.php