中西部洪水で米国エタノール大手の株価が下落 大部分の中小生産者は数ヵ月中に撤退の観測

農業情報研究所(WAPIC)

08.6.13

  12日、米国エタノール大手3社の株価が大幅に下落した。作物災害をもたらし、トウモロコシ価格をブッシェル7ドルにまで急騰させた中西部の洪水を受け、シティーグループのアナリストが投資家に株の売却を勧めたためだ。朝の取引で、BioFuel Energy Corp. (BIOF、バイオヒューエル)は23.1%下落して3ドル、VeraSun Energy Corp. (VSE、ベラサン) は11.4%の下落で4.72ドル、ADMは7.7%の下落で34.41%となった。

シティーグループのアナリスト、デビッド・ドリスコルは、そのリサーチリポートで、この価格では中小規模のエタノール生産者のマージンはマイナスになると書いた。これら生産者の”すべてではないが、大部分”は、数ヵ月のうちに工場閉鎖を余儀なくされる。彼は、以前はベラサンやバイオヒューエルの株を買うように投資家に勧めたが、いまやこれら生産者の株は売るべきだと言う。エタノール部門の比重が小さいADMについても、”買い”から”灰色”に評価を下げた。

US: Ethanol shares plunge after citi warns on costs, says sell,CNN Money,6.12       http://money.cnn.com/news/newsfeeds/articles/djf500/200806121200DOWJONESDJONLINE000737_FORTUNE5.htm

 ドリスコル氏は、中西部の洪水は、今年のトウモロコシ収穫に”回復不能”の損害を与えるだろうと見る。今までのところ、5つの小規模生産者が工場を閉めただけだが、これは”氷山の一角”にすぎず、今後数ヵ月の間に20億〜50億ガロン(2015年のトウモロコシ・エタノール生産目標は150億ガロンである)のエタノール生産が停止する可能性がある。ベラサンやバイオヒューエルのような大規模生産者は、規模の経済故に有利だが、それでも高いトウモロコシ価格で収益が縛られるのは避けられないと言う。

 トウモロコシをバイオ燃料(エタノール)にするのはやめろという声が高いが、いまや自滅に進み始めたのかもしれない。ただし、それでトウモロコシ価格が大きく下がるわけではない。トウモロコシは、戦後畜産にとっては石油のようなものだ。飼料用需要はどこまでも膨らむ。