ケニア裁判所 野生動物の宝庫・タナ川デルタのバイオ燃料プロジェクトの停止を考慮中

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.6

 インド洋に面するケニアの交易・観光都市、マリンディの高等裁判所が、野生動物の宝庫であるタナ川デルタの2万fの沿岸草地を灌漑サトウキビ畑に変える3億7000万ドルのバイオ燃料プロジェクトの第一ステージの停止を考えている。司法によるプロジェクトの審査は、ネイチャー・ケニア、東アフリカ野生動物協会、遊牧養牛グループなどの運動を受け、先月(7月)11日に聞き届けられた。

 Kenyan courts consider terminating biofuel plans,SciDev,net,8.5
 http://www.scidev.net/en/news/kenyan-courts-consider-terminating-biofuel-plans.html

 このプロジェクトは、砂糖精製過程から1日当たり最大34メガワットの電力を生産するとともに、廃蜜糖から年間2000万リットルのエタノール燃料を生産しようとするものという。地域開発省の下にある国家環境管理庁(NEMA)と、ケニア最大の製糖会社であるムミアスがこのプロジェクトのパートナーをなす。

 NEMAは今年6月19日、三つのステージからなるプロジェクトのうち、500fの農地にのみかかわる第一ステージを承認した。NEMAは07年9月、ナイロビ大学のアグロフォレストリー研究者であるDavid Mungaiにプロジェクトの環境影響評価を委嘱した。その結果は、環境への悪影響は、利用可能な最善のやり方を使い、国の規制を厳格に守ることで和らげることができるというものだった。

 プロジェクトの推進者は、このプロジェクトが燃料価格を下げ、年間20万トンの砂糖輸入による外貨の損失を減らし、2万の雇用を創出し、ケニアの道路でバイオ燃料車を走らせると主張する。

 しかし、ネイチャー・ケニアのPaul Matikuなどの環境保護運動家は、ケニアの環境法が要求するプロジェクトの設計ドキュメントの欠如は評価の過程の決定的手抜きだったと言う。ネイチャー・ケニアが5月に委嘱したリポートは、開発計画が利益を過大に評価し、水利用料金やサトウキビ栽培による汚染、野生動物観光からの所得の損失を無視していることを発見した。

 マリンディの町の高裁判事、Hellen Omondiは政府諸省庁の決定過程を審理している。ムミアス社も、裁判所への証拠書類提出を命じられたということである。

 関連日本語ニュース
 ケニアのタナ川デルタ、バイオ燃料用サトウキビ畑に,daily-ondanka.com,08.6.29
 http://daily-ondanka.com/news/2008/20080629_1.html