ニュージーランドバイオ燃料法が成立 一定量のバイオ燃料販売を義務化

農業情報研究所(WAPIC)

08.9.6

 ニュージーランド議会が9月3日、今年10月から初めて毎年一定量以上のバイオ燃料の販売を石油会社に義務付ける法案を採択した。石油会社は、最初の1年は販売量の0.5%をバイオ燃料とせねばならない。この比率は1年に0.5%ずつ増加、2012年に2.5%になる。

 法律は、持続不能な輸入*バイオ燃料の販売を避けるために、販売するバイオ燃料が満たすべき三つ位の基準も定めた。第一の基準は、ライフサイクルを通しての温室効果ガス排出量が化石燃料に比べて大きく減ること、第二の基準は、食料生産への悪影響を避けること、第三の基準は、土地に固有の生物多様性を減らさないこと、あるいは保全価値の高い土地に悪影響を与えないこと、である。

 *国内生産バイオ燃料については、当面は畜産副産物・廃棄物を原料とするものが中心で、持続可能性に関する心配は余りないようだ。

 ただし、販売されるバイオ燃料がこれらの基準を満たしているかどうかをどのようにして決めるかについては何も決まっていない。来年の6月30日までに決定、閣議決定により実施するという。

 Biofuel push may backfire says official,The New Zealand Herald,9.4
 http://www.nzherald.co.nz/section/1/story.cfm?c_id=1&objectid=10530652

 議会環境コミッショナーのジャン・ライト博士は、この法律が”クリーンで、グリーンな国”というニュージーランドの評判を傷つけると警告してきた。

 世界のバイオ燃料論争における主要な論点の一つは、一部のバイオ燃料は、環境に良いどころか、却って悪いということだ。世界の食料価格を高騰させ、食料不足につながる恐れもあるという批判も高まっている。そのために、政府は、”持続可能性原則”の導入による法案修正を余儀なくされた。

 しかし、ライト女史は、法案が通過した3日、一定の修正がなされた後にさえ、なお懸念が残ると繰り返したという。

 国民党は反対票を投じたが、その気候変動関係スポークスマのニック・スミス博士は、問題は法律が持続不能なバイオ燃料の輸入を止められないことだ、「この法律が、例えばインドネシアからの持続不能なバイオ燃料の会社による輸入を止めるだろうか。そうはならない」と語った。

 国民党は今週末に党の環境政策を明らかにする予定だが、バイオ燃料立法の強制的側面の廃止を誓うことになりそうだ。代わりに、バイオディーゼルとエタノールの両方に対して同等な税制ベースの刺激策に頼るという。

 他方、賛成した緑の党と労働党は、持続可能性問題はスミス博士が言うほどに深刻ではないと主張した。緑の党のリーダーの一人は、「最初の年の0.5%義務は、持続不能なバイオ燃料の大量の流入にはつながらない」と言っているそうである。


 バイオ燃料の持続可能性が確保できるのかどうか、いささか頼りない話だが、日本よりはマシかもしれない。日本では、国会におけるこのような議論はなく、まして法律もない。法的基準がないまま、なし崩しのバイオ燃料導入が進む。