2008年FAO食料農業白書 バイオ燃料の展望・リスク・機会の包括的分析
08.10.9
10月7日に発表された国連食糧農業機関(FAO)の”2008年食料農業白書”(The State of Food and Agriculture 2008)が、その大半を構成する第1部でバイオ燃料問題を取り上げた。
http://www.fao.org/docrep/011/i0100e/i0100e00.htm
報告はバイオ燃料の概説から始め、それがもたらすリスクと機会を包括的に分析した上で、バイオ燃料の生産と消費は食料安全保障や環境への影響の理解を進める暇もないほどの猛スピードで拡大していると、既存のバイオ燃料政策の緊急の見直しの必要性を強調する。
その分析は既存の知識や研究に基づくもので、それから導かれる個別の諸問題に関する見解や主張も、基本的には既に言い尽くされている(昨年5月の国連報告:国連バイオエネルギー影響評価報告 バイオ燃料産業急拡大に警告とも重なる)。
ただ、ここで取り上げられた農業、経済、環境、社会(貧困、食料安全保障・・・)など、バイオ燃料に関係する広範な分野の問題のすべてに精通している関係者(専門研究者、学者も含め)は少ないだろう。しかし、バイオ燃料唱道者、開発者、政策決定者は、バイオ燃料にはどんな問題があるのか、包括的知識を持たねばならない。
例えば、この白書の第5章で取り上げられる”バイオ燃料は限界地で生産できるか?”という問題をどれだけ意識しているだろうか、あるいは確かな証拠をもってこの問題に答えることができるだろうか(この白書の答えは否定的である。少ない養分=肥料・水・労働で高収量が得られ、病害虫に強く、食料とも競合しないと世界中で大流行のヤトロファも、こういう見解・主張を立証する科学的証拠はまったくないと言う―第5章 14-15頁)。
そういう自問を促すために、とりあえず、この白書の目次を掲げておく(但し、この報告の見解や主張を絶対視するつもりはない)。
1.序文と基本的メッセージ
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e01.pdf
農業とエネルギー
液体バイオ燃料の機会とリスク
バイオ燃料政策と目標:ミスマッチがあるのか?
報告の基本的メッセージ
2.バイオ燃料と農業:技術的概観
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e02.pdf
バイオ燃料のタイプ
輸送用液体バイオ燃料
バイオ燃料原料
バイオ燃料と農業
バイオ燃料のライフサイクル:エネルギー バランスと温室効果ガス排出
第二世代バイオ燃料
バイオエネルギー の潜在能力
本章の基本的メッセージ
3.液体バイオ燃料の経済的・政策的牽引者
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e03.pdf
バイオ燃料市場と政策
バイオ燃料政策の基本的目標
バイオ燃料開発に影響を与える政策措置
バイオ燃料政策の経済的コスト
バイオ燃料の経済的存続可能性
本章の基本的メッセージ
4.バイオ燃料市場と政策の影響
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e04.pdf
バイオ燃料と商品市場の最近の発展
バイオ燃料開発の長期展望
バイオ燃料の中期見通し
バイオ燃料政策の影響
本章の基本的メッセージ
5.バイオ燃料の環境影響
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e05.pdf
バイオ燃料は気候変動を緩和するか?
土地利用変化と集約化
バイオ燃料生産は水・土壌・生物多様性にどう影響するか?
バイオ燃料は限界地で生産できるか?
環境的に持続可能なバイオ燃料生産の確保
本章の基本的メッセージ
6.貧困と食料安全保障への影響
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e06.pdf
国レベルの食料安全保障への影響
家庭レベルの食料安全保障への影響・短期的影響
農業成長の起動力としてのバイオ燃料作物生産
バイオ燃料作物の開発:公平性とジェンダーの問題
本章の基本的メッセージ
7.政策の挑戦
ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/i0100e/i0100e07.pdf
報告が取り組んだ問題
改善されたバイオ燃料政策のフレームワーク
政策行動の諸分野
結論