食料作物のバイオ燃料生産能力は倍以上に過大評価されている―米国の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

09.1.14

 ウィスコンシン大学とミネソタ大学の研究者が、トウモロコシ、大豆、菜種などバイオ燃料を生産するために使われる世界の食料作物の収量が100%から150%も過大に評価されているという新たな研究を発表した。これは、食料の供給や価格、環境に悪影響を与えることなくこれら作物から生産できるバイオ燃料の量の過大な推定につながる。バイオ燃料政策の決定はもっと正確なデータに基づかねばならないという。

 Matt Johnston et al.,Resetting global expectations from agricultural biofuels,Environmental Research Letters,Volume 4, Number 1, January-March 2009
  http://www.iop.org/EJ/article/1748-9326/4/1/014004/erl9_1_014004.pdf?request-id=02fffff6-8318-42aa-805a-3fc36660f370

 政策立案者、企業、農民などは、様々な作物に関する単位面積あたりの燃料収量を比較する”収量表”*に基づいてバイオ燃料に関する決定を行ってきた。しかし、これらのデータは、たった一つの国、ときには実験圃場から得られたものであったり、最も楽観的なものが選ばれたりしている。ソース不明のものさえある。

 研究者は、世界全体の175作物の2000年の実際の収量データを提供するSAGEが開発した世界農業データベースにより、10種のバイオディーゼル作物と、10種のエタノール原料を研究した。これにより20種の燃料のそれぞれのの世界平均収量と、先進国・途上国の両方におけるそれぞれの平均収量を計算した。

 その結果、以前の収量表とこの計算結果には大きな違いがあることが分かった。例えば、先進国におけるトウモロコシエタノールの平均収量の計算結果は現在の収量表の推定と違わないが、途上j国の平均収量は100%近く低かった。世界最大の菜種生産国の一つ、カナダの平均収量は、ヨーロッパの平均収量に基づく既存の収量表の数字の半分ほどで、他の先進国の平均も大きく下回る。

  大麦、キャッサバ、カスター、トウモロコシ、菜種、ヒマワリに関する既存の世界バイオ燃料収量推定は少なくとも100%の過大評価、小麦エタノール、落花生ディーゼルについては150%以上の過大評価という。

 研究者は、「この研究の意図は、農業バイオ燃料をめぐる世界の期待をもっと現実的なスタート地点に立ち返らせえることだ」と言う。

 *現在一般的に利用されているのは、この研究でも引用されるWorldwatch Instituteとレスター・ブラウンによる次のような推定である。

 バイオ燃料収量表(liters/hectare)

作物 Worldwatch Institute レスター・ブラウン
サトウキビ 6000 (ブラジル)6192
テンサイ 5000 (フランス)6679
キャッサバ - (ナイジェリア)3815
トウモロコシ 3100 (米国)3311
小麦 2500 (フランス)2591
大麦 1100 -
スウィート・ソルガム - (インド)3498
オイル・パーム 4500 4752
ココナッツ - 2151
菜種 1200 954
ヒマワリ 1000 767
大豆 600 524
落花生 - 842
カスター 800 -